ゴールドクイーン 陣営も驚く芝での快進撃! 軽量生かして古馬撃破だ
2018/8/16(木)
葵Sで重賞初制覇を飾ったゴールドクイーンが、重賞2勝目を目指す。前走のバーデンバーデンCは惜しくも2着に敗れたが、芝1200mは2勝2着1回と安定して結果を出しており、今回はフェニックス賞を快勝した小倉芝に舞台が変わる。51キロの軽斤量を生かし、快速牝馬が坂口正則厩舎最後の夏に花を咲かせる。
-:今週、北九州記念(G3)に挑戦するゴールドクイーン(牝3、栗東・坂口則厩舎)ですが、ハンデは51キロと軽く収まりましたね。
榊和幸厩務員:結局、前回(バーデンバーデンカップで2着)勝てなかったのが良かったのかな、ある意味でね。もちろんどんなレースでも勝ちたいけれど、今回については前回の敗戦がいい方に向いてくれたと思っています。
愛馬ゴールドクイーンと榊厩務員 栗東トレセンで撮影
-:ハンデ戦ではありませんが、先週も関屋記念で3歳牝馬(プリモシーン)が51キロで勝っていたので、この斤量はかなり大きいのかなと。小倉には1週間ほど滞在されるのですね。
榊:そうですね。先週金曜日に移動しました。
-:現場で先週の馬場を見ていて、どんな印象を感じられましたか?
榊:時計は速いでしょうね。馬場ももし雨が降ったとしても、極端に田んぼ馬場みたいにならなければ、ダートも走れる馬ですからね。
-:前回の福島もちょっと軟らかかったですからね。
榊:うん。別に時計が速くても大丈夫ででしょうし、少々雨が降ったって大丈夫でしょうし。
-:話題は逸れますが、ダートで負けた時(昇竜S10着)がありましたよね。
榊:あれは左回りですね。左回りが下手っぽいので……。
-:言われてみれば、フェニックス賞で勝った時も手前の替え方がどこかモタモタしていて、替えてから伸びた感じがしました。
榊:あの馬は(厩舎に)来た時から手前を替えるのが下手ですからね。坂路でも反対手前でしょっちゅう走っているからね。特に左回りだと、ぎこちないないのかな。それで、CBC賞も使わなかったので。
-:それは、体のバランスによるものだったりするのでしょうか?
榊:いや、それはないんじゃないですかね。単に苦手なだけで。右回りだったら大丈夫ですね。別に阪神でも走っているから、坂だって大丈夫だし、パワーもありますから。
-:その昇竜ステークスはフェニックス賞以来のレースでしたね。
榊:本当は2歳の秋に北海道で、エーデルワイス賞(牝馬限定、ダート1200m)があるじゃないですか。あのレースを使いたかったんですよ。「間が空くから、小倉(フェニックス賞)を使うから」と言って、そうしたらフェニックス賞も勝ってくれたのに、骨折して使えなくなって……。
-:ただ、短い距離、1200mは一定のペースになりやすいじゃないですか。そういうところはちょっとダート戦に近いので、芝をこなす馬もいますよね。
榊:結局1200mだったら、どっちでもこなすんじゃないのかな。それに、3歳で1200mのダートは少ないじゃないですか。だから、芝を使っているので。葵ステークス(1着)も、結局その前に橘S(3着)を使って、その前にダートのオープンを使うつもりにしていたんだけど、捻挫で止めたんですよね、ハハハ。
-:ここまで幾つかケガがあったわけですね。
榊:捻挫で使えなかったからね。結局、橘Sの後に葵Sがあって、オープン勝っているから使えるので。
-:やっぱりフットワークもちょっと硬さはありますよね。
榊:今までの乗り役たちも「ダートも走れるね」と口を揃えますね。
-:ただ、今回は芝のレースです(笑)。前回の結果も決して悪いレースではなかったと思いますし、繰り返しになりますが、51キロとハンデも軽いですよね。
榊:芝でも走れるから、すごいなと思いますね。父がシニスターミニスターですから、一般的にはダート馬やね。体型的には芝も走れる格好をしているのでね。爪の形も芝もしくはダートじゃないと、という特化したわけではないですね。でも、距離は持たないのかな。
-:スプリントにしては、ちょっと走りはユッタリとして、何でこれでテンが速いのかなと思います。
榊:でしょ、距離が持ちそうな走り方をしているんですけどね。1000mや1200mを使っている馬よりはユッタリと走りよるでしょ。その割に1400mは持たないんですよね、ハハハ。変わっとるで(笑)。
-:距離は性格面から1200mが限界ということですか。
榊:性格の問題じゃないですか。
-:普段とレースの時、どんなギャップがありますか?
榊:落ち着いていますよ。だから、返し馬なんかは乗りやすいですし、競馬も乗りやすいらしいですけどね。パドックでも落ち着いています。レースでは(ゲートを)出てからが速いらしいんです。そのトップスピードのままビュッと回ってくるから、競馬がずっとそんな感じですからね。
-:前回以降の調整面はいかがでしょうか?
榊:いつもと一緒ですね。順調で、極端に変わったことはないですね。いつも通りです。暑い時期だけど、こたえた感じもしませんからね。良い汗は掻くけど、全然大丈夫です。
-:輸送も堪えないタイプでしょうか?
榊:体重は落ちるけど、意外とボタりはしないですね。福島も輸送距離は長いけれど、同じ体重で出れましたからね。それで、別に帰ってきても、ボタっていないし。
-:馬体重は前回と同じくらいですか?
榊:同じくらいかな。今が460キロ。だから、よく似た体重で出られると思います。栗東にいる間が余裕を持った体をしているから、運んで落ちてちょうどくらいですからね。栗東では470キロでしたからね。運んできて10キロ落ちて、今460キロですしね。
-:カイ食いもいいのではないでしょうか。
榊:苦労はしないですね。
-:今週は小倉で追い切ることになりますが、環境の変化に戸惑いはありませんか?
榊:いや、小倉ではフェニックス賞で使っていますからね。去年は木曜日に出発して、金、土と乗って、日曜日に競馬でしたね。でも、いまだに栗東で物見していますけどね、ハハハ(笑)。
-:ちなみに、どんなものに目が行ってしまうのですか?
榊:途中にある(廃棄物)ボックスとか、いまだに見るのかい!?みたいな。トレセンに来たばっかりの2歳みたいに、同じようなことをしていますよ。
-:怖がりなわけではないんですよね。
榊:怖がりではないですね。
-:初めてこの馬をやられた時の印象は、重賞を勝ってくれるような馬になってくれるということは想像できましたか?
榊:いや、本音はダートで着、着に来て、そのうちに勝てるかなと。未勝利、500万くらいの馬かなという感じでしたね。全く走らない馬とは思いませんでしたけどね。
-:それが変わってきたのはいつ頃、どういったタイミングでしたか?
榊:新馬の時の最後の追い切りかな。ひょっとしたら、新馬で勝ち負けになるな、というくらいの動きでしたから。
-:そこから成長があっての快進撃ですよね。
榊:やっぱり馬に身が付いてきたところですかね。本当に薄い馬でしたからね。
-:それでも、まだまだ3歳ですからね。
榊:ええ、まだまだ良くなると思いますね。
-:ちなみに、葵ステークスで初めて重賞を勝たれました。その時の手応えはいかがでしたか?
榊:こちらも着に来たら良いだろう、くらいな……(苦笑)。でも、結局これだけ成績を残しているから、1200mだったら走れると思いますけどね。
-:そろそろ見立てを変えないといけないという感じですね?
榊:芝でもダートでも1200mだったら良いのかなと。おそらく1200限定でしょうけどね。
-:1000mはどうですか?ダートを走る馬も活躍するレースです。
榊:一部では「1000mを使え、使え」と言われるのですが、「あれだけピュッと行くので、1000mは良いんとちゃう」とね。
-:来年以降のお楽しみですね?
榊:使ってみても走れるかもね。坂路は動くからね。
-:追い切り時計は前から良い方でしたか。
榊:えらい時計が出るようになったのは、左前の膝を骨折して帰ってきてからですね。重い症状ではなかったし、結果的に、スピードに体がまだ追い付いていなかったんじゃないですかね。それで、半年くらいちょっとユックリさせたのも良かったんじゃないですかね。
-:そんな状態で早い段階で2勝出来ていたということは大きかったですね。
榊:それはあると思いますね。使いたいところは使えますからね。
-:今回は相手もより一層強くなると思いますけど、ハンデを見たら、面白い存在ではないのかなと。今回、理想の条件があれば教えていただきたいのですが。
榊:一番良いのは晴れの内枠ですね。絶好じゃないですか。内枠を引いて、距離損なくスッとラチ沿いを走ってきたら、一番良いんじゃないですか。今のところ3人の騎手しか乗っていないけど、一貫して「乗りやすい」という評価ですね。どうせ前に行く馬だから、内枠の方が。
-:今までやってきて、もちろんケガはありましたけど、苦労したところはありますか?
榊:苦労は、つまらんケガはしますけどね、ハハハ。あとは手術を1回しているから、たまに触られるのを嫌がるんですよね。手術してから、また何かされると思ってるのでしょうね。余程嫌だったんでしょうね。帰ってきてからしばらくは、捕まえるのが大変でしたけどね。
-:戻ってきてから、パワーアップもしているでしょうからね。
榊:パワーアップもしているしね。たまに捕まえさない時があるくらいで、それでも捕まえてしまえば、普通に大人しいもんですからね。大体、ハートバミを着けたり、リップ(チェーン)を着けたり、メンコをしたりしてみんな引っ張っているけど、そんな道具は着けたことがないからね。
-:そういうのは大きいですね。
榊:道具を着けて、引っ張りやすいんだったら、それで馬も人間もお互いにいらんケガをしないで良いからね。
-:でも、やっぱり自然が一番ですかね。
榊:だから、無理をしてそんな道具を着けなくても引っ張れるんだったら、それに越したことはないからね。煩くなるまではどうもせずに、ずっとそのままですから。だから、道具を着けて抑え込まないといけないほどではない。ずっとそれは変わらないですね。
-:厩舎はエイシンティンクルで関屋記念も3着と惜しかったですけど、2週連続重賞で好走できればいいですね。
榊:調教師は今週も新聞屋に一杯囲まれるんやろな、ハハハ(笑)。調教師も(引退まで)最後だし、勝って欲しいんだけどね。来年2月で解散ですからね。勝って、使えるところを使えるようになりたいね。
-:成長度合いというのは、この時期の他の3歳牝馬と比べて、どんな感じですか?
榊:まだ大きくなりそうですね。まだまだ大きくなりそうな雰囲気はある。
-:残りの半年間ですね?
榊:最大目標へ向けて今回も頑張れればね。
-:ありがとうございました。
プロフィール
【榊 和幸】Kazuyuki Sakaki
1970年、京都府向日町出身。幼少期は近場の競輪場で走り回っているような子供だったという。馬に特別な思い入れがあったわけではないが、動物を扱う仕事がしたいという思いがあり、大学時代に周りに競馬好きが多かったことから競馬界へ。大学卒業後、三重ホースで働き始めたところ、競馬学校厩務員課程を受ける流れがあり、流れに身を任せ受験。合格後、トレセンでは坂口正則厩舎一筋でやってきた。
思い出の担当馬は小倉2歳ステークスにも出走したツルマルオトメや障害重賞を勝ったレガシーロックやエイシンディーエス。自身、初めての平地重賞勝ちをゴールドクイーンで経験した。仕事では「馬に合わせること」を心がけるため、馬を怒ることも少ないという。「周りからもいつもニコニコ仕事をしているね」言われるという、優しいホースマン。