昨年、デビュー初年度JRA51勝をあげて話題となった今村聖奈騎手、そしてこの夏、函館競馬リーディングを獲得した佐々木大輔騎手と、活躍が目立つ競馬学校38期生の2年目ジョッキーたち。切磋琢磨し続ける38期生で競馬学校時代、最も優秀な成績を残したのが期待の若武者・角田大河騎手。今年毎日杯を勝って重賞初制覇を果たし、更なる飛躍を目指すアスリートに、2年目の現状、そして"相棒"とのレースについて聞いた。(取材日:7月11日火曜)

宝塚記念にはモズベッロで参戦、貴重なグランプリ経験

-:まずは今年、ここまでの成績について聞かせてください。7月10日時点で、今年はJRA21勝。1カ月のブランクがあった中で、自分の中で達成度はどのくらいでしょうか。

角田大河騎手(以下角):正直まだまだです。半年で21勝、もっと頑張らないといけないというのが正直なところです。

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3月の毎日杯をシーズンリッチで勝って重賞初制覇

-:騎乗停止になっていた1カ月、週末はどのように過ごされていたのでしょう。

角:土日も調教に乗って、競馬を見ての繰り返しでした。1カ月乗れない期間があってからあまり騎乗依頼も増えていないので、取り返していかないといけないと思っています。

-:この夏の目標はありますか?

角:とにかく勝つことです。数字の目標はなく、とにかく勝ちたいです。

-:暑い時期が続き、体力的にも大変な時期だと思います。

角:体力と運動神経にはいつも自信があるので、夏はたくさん乗ることが大事だと思っています。

-:ちょうど今、北海道では同期の佐々木大輔騎手がブレイクしています。

角:戦っている競馬場は違うものの、結果を出していますよね。負けられないです。彼とは週中電話でよくレースの話もしますし、活躍は刺激になります。

-:同期に先駆けて、角田騎手はた宝塚記念モズベッロで2度目のG1騎乗を果たしました。昨年12月にウメムスビに騎乗した朝日杯FS以来2度目のG1騎乗でしたが、雰囲気は2歳G1とは違いましたか?

角:そうですね、朝日杯の時はまだ観客制限がありましたし、制限がなくなってからのグランプリ、しかもスタンド前発走で、歓声の大きさも違うように感じました(※朝日杯は向正面スタート)。ファンの皆さんの熱気を感じられて、すごくいい経験になりました。

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-:騎乗依頼ははいつ頃受けられたのでしょう?そして騎乗依頼をいただいた時の率直な感想をお聞かせください。

角:1、2週前に依頼をいただいたのですが、単純に、いい結果を残したいなと思いました。

-:モズベッロにはテン乗りでした。2走前の新潟大賞典で騎乗したお兄さん(角田大和騎手)に話を聞いたりもしたのでしょうか?

角:色々な人に聞きましたね。もちろん兄にも聞きましたし、実際乗ってみると聞いていた通りの馬でした。僕よりG1、重賞を経験している馬ですから、馬に教えてもらうことはたくさんありました。

-:宝塚記念に騎乗した感想が気になるところです。

角:G1ならではの、抜け目ない隊列と言いますか、G1はどのジョッキーの皆さんもいつも以上にタイトに乗ってくるので、これがG1なのだなと実感しました。馬群の間がきっちりし過ぎていて逆に怖いくらいで、誰もが勝ちたいレースだけあって凄くタイトな競馬に参加させていただき、とてもいい経験になりました。

加えて、あとでパトロールを見ると、先輩ジョッキー1人1人が考えていることが伝わってくると言いますか、様々なことを考えて乗られていることが改めて伝わってきました。それだけに平場のレースからもっと頑張ろうと思いました。

-:イクイノックスの走りを間近で見られるのも貴重な経験になったのではないでしょうか?

角:ちょうど僕の外にいましたからね(笑)ジェラルディーナとジャスティンパレスが外から上がっていって、更に外からイクイノックスが上がってきたのですが、近くで見ると本当に凄い馬でした。

"相棒"エイシンスポッターと歩む成長の日々

-:さて、ここからはもはやファンの間でも定着したコンビ、エイシンスポッターの話を聞かせてください。エイシンスポッターとは昨年5月の未勝利から10戦連続でコンビを組まれています。

角:未勝利が終わった後、父(角田晃一調教師)が「この馬重賞勝てるぞ」と言われ、師匠(石橋守調教師)にも「あの馬は手放すなよ」と言われました。昨年は自分の技術が伴っていない中でいい馬を任されて、全然上手く乗れないことが続いて、なかなか切り換えられなかったのですが、エイシンスポッターには自信をつけさせてもらいました。後ろから行って馬群を捌くには相当覚悟がないといけないので。

今はまだ気持ちを取り戻せるようになってきました。素質がある馬なので失敗が許されないじゃないですか。でも一番力を引き出せるのは自分だと思いながら、自信を持って乗るようにしました。本当に大きな経験をさせてもらっています。

-:昨年末のファイナルSも素晴らしい騎乗でした。

角:あのレースも事前に先生に「ゲート出てから出していきますが、その結果どうなるかは分からないので、その後は僕に任せていただけませんか」と直談判して、先生にも「任せる」と言っていただけたんです。結果スタートから出していっても最後方からでしたが、これはもう仕方ないと割り切りました。最後方ということは前の馬の隊列を全て見れますから。腹を括って、他のジョッキーの心理を考えながら乗れました。

-:5月の鞍馬Sも馬群の真ん中を割る、鮮やかな勝ち方でした。

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角:あのレースは良かったです。あの進路(馬群の真ん中)を通らなかったら勝てたかどうかと思います。

-:ゲートを出てから押していっているように見えましたが、それでも一瞬最後方まで下がりかけていました。馬自身が行かなくなっているのでしょうか?

角:毎回毎回押して行っているのですが、結果後方のあの位置にいるんですよね。これまでも後方からの競馬を徹底してきたので、馬がレースを分かってますね。

-:仮にスタートから押さないとどうなるのでしょうか?

角:もっと後ろから、それこそ最後方からになりますね。最後方になるより、少しでも後ろから2、3番手にいたほうが隊列的には有利になります。

これがエイシンスポッターのような馬がもう1頭いるなら話は別です。最後方でもそういう強い馬が目の前にいるなら、その馬の後ろについていく作戦も考えられますが、鞍馬Sの場合そのような馬が見当たらなかったですし、自分でポジションを取りに行きました。

相手を考える前にまず最初は自分の馬とのコンタクトを確認しました。ちょうど不良馬場でしたし、隊列的にも外を回っても勝てないと判断して、一歩引いてから内を回る選択を取りました。

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-:直線、前にいたのはフレッチア、ロードベイリーフと人気薄が多く、馬群を捌きに行くのはなかなか勇気がいることだったのではないでしょうか?

角:まずはその2頭の手応えを見ました。最初はロードベイリーフについていこうと思いましたが、その日の馬場コンディション的には内も外もそこまで変わらず、内を通った馬が逃げ切るレースもあったので、常に内も見ていたら、3番手のスノーテーラーが抜け出したところのスペースが開いたので、そこを突いたところエイシンスポッターも瞬発力を発揮してくれました。

-:それまでのレースを見るなど研究の成果が出たということですね。

角:そうですね。いいレースができたと思います。

-:エイシンスポッターと共に挑んだCBC賞は6着。レース後「前が止まらなかったです」とコメントされていた通りの展開でした。

角:本当に前が止まりませんでしたよね。上がりが掛かって前の馬を捕まえられなかったら「捉えることができませんでした」という言い方になりますが、レース前半600m33.7で入ったのに、レース上がり3F33.5となると……。

いつも後ろからいくエイシンスポッターにはペースを変えることはできないですからね。ただ、それがエイシンスポッターの強みでもあります。自分の競馬を必ずやってくれること強みです。

内外変わらない馬場で上がり3Fのほうが速いレースになるとどうしても厳しいです。その中でもよく6着まで差してきてくれたなと思います。

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-:最後方から少し早めに上がっていかれたのも、大外を回らなかったのもペースを考慮しての判断でしょうか?

角:そうですね。道中、止まらなかったら嫌だと思っていましたし、外を回っても勝てないと判断しました。ちょうど3番人気のヨシノイースターが内にいたので早めにフタをして、馬群の中に入っていく選択を取りました。

-:トゥラヴェスーラの後ろから伸びてきましたが、ちょうど1番人気のマッドクールが寄ってくる形になりました。その影響はありましたか?

角:影響はなかったです。早めに切り換えられましたが、結果的にはトゥラヴェスーラの後ろをまっすぐ走って、そこから進路を探しても良かったとも思いました。それは反省点です。

マッドクールは単勝1倍台に支持されていて伸びると思っていましたし、直線を向いて馬群が開き相手を絞る際、マッドクールも相手候補の1頭でした。

しかしマッドクールが下がってきてしまって……。もう少し手応えを見て判断しても良かったなとも思いましたね。反省点です。エイシンスポッターにはなかなか厳しい展開だったと思います。

-:秋の巻き返しが楽しみになりますね。

角:そうですね。楽しみです。

-:改めて、今年ここまで半分終わって、下半期の目標を教えてください。

角:まずは(上半期挙げた)21勝以上はしたいです。常々、それ以前の成績を更新したいと思ってやっています。

-:夏の小倉での騎乗は2度目となります。

角:小倉は苦手とも思っていませんし、4週間、精いっぱい頑張りたいです。

-:最後にファンの皆さんへメッセージをお願いいたします。

角:正直今の結果には満足していません。応援してくださっている皆様にも迷惑をかけてしまいました。恩返しというわけではないですが、しっかり結果で返していきたいと思います。応援よろしくお願いします。