元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
公正競馬
2016/11/24(木)
皆様、こんにちは!最近ピラミッドダービーという番組を毎週見ているのですが、ビーチフラッグ対決というものがあり、なんと石坂厩舎にいたG1馬アロンダイトが出ていました。内容としては、犬や人、馬などでビーチフラッグ対決をするというものでしたが、久しぶりに見たアロンダイトは何と初戦敗退でした笑。速さでは勝ったのですが、コントロールできずに旗を通り過ごしてしまいましたよ。しかし、なかなか競馬を見ない人にとっては競走馬が、その様な番組に出て、本当に速いなぁと思ってもらえただけでも良かったと思います。
それでは現役の馬の話をしましょう!先週は、京都競馬場でマイルCSが行われました。満員になったお客様を前に勝利したのは久しぶりにコンビを組んだミッキーアイルと浜中君でしたね。しかし、今回はお世辞にも素晴らしい勝利だったとは言えませんね。レースはスタート直後、スプリント戦を戦ってきた当馬がすぐさま先頭を奪うとレースを作っていきました。そして、2番手には世界の名手ライアン・ムーアのネオリアリズムがつけ、その形態のまま迎えた直線。2頭が「荒れた馬場は前残りだ!」と言わんばかりに早めに抜け出すと、壮絶な叩き合いになりました。それを追いかけるようにルメールとイスラボニータが迫る中、浜中君が右ムチを連続で打ったことで外へと斜行し、あわや大惨事となりそうになる勝利を収めました。
レース後「馬は強かった。自分が悪かった」と反省を口にしていましたが、それでも馬券を買っているファンからは許しがたい内容だったと思います。今年起きたG1での騎乗停止は、外から差し込まれながら前にも入られるや、締めに行く中強引に出すなど、ルールとしてはダメですが、元騎手として気持ちは理解ができるものでした。もちろん、それらも許される内容ではないですし、騎手は罪を受けます。騎乗停止に関しても、そうだなと思いました。しかし、今回のはムチを持ち変えることもできず、さらに叩き続けたことに問題があると思いますし採決内容には疑問が残ります。しかも、行ったのは一番スピードが出るゴール前であるからこそ、余計に危ないです。
もちろん、ライアンが左ムチで合わせることで両者が伸びることも考えられましたが、ライアンも右ムチとなれば、外へ2頭で流れてしまいますからね。今回は、本当に運がよく、誰も落ちませんでしたが、大事故になる内容だったと思います。そして、ここまでやっても勝利は変わらないのであれば、文句が出ても当然です。これを許していれば、これからも、このような事象は増えるでしょう。そして、それは土曜日に行われた柴田大知君の騎乗にも言えます。あちらは10万円の罰金だけでしたが、あれも騎乗停止が妥当ではないかと私は思いました。G1だからとか、この騎手だからとかで採決内容が変わっている気がしてなりません。公正競馬を行うと言っている上で、レースの格や、やった人やられた人で内容が変わる現在の採決にも問題はあると思います。一競馬ファンとして見ていてスッキリとする内容になることを望んでいます。
悶々とした内容になってしまったレースを反省しながらも、次のレースに目を向けましょう。今週はインターナショナルG1のジャパンカップが東京競馬場で行われます。今年は海外から3頭が挑戦してきます。それを迎え入れる日本代表は、かなりのメンバーが揃いましたね。なんと言っても私の注目はシュヴァルグランになります。ずっと注目していた一頭で、前走では最大斤量を背負いながらの勝利で、馬自身も自信が出てきたように思います。そして、キタサンブラックからも目が離せませんね。自分でレースを作ることができる馬の上に、レースを作らせたらピカ一の豊ちゃんが相棒ですからね。鬼に金棒とは、このことを言うのではと思っています。
その他には、前走もデキは8割程度だった中、好走したリアルスティールに、前走でトライアルとして100点の競馬をしたサウンズオブアース、グランプリに向け虎視眈々と頂点をここでも目指すゴールドアクターと楽しみがたくさんなレースです。最大賞金3億円を手にするのは、どの馬か!今年最後の東京競馬に是非、足を運んでください!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。