強いエピファネイアが復活勝利!スミヨンJが導く!!

エピファネイア

14年11月30日(日)5回東京9日目11R 第34回ジャパンカップ(G1)(芝2400m)

エピファネイア
(牡4、栗東・角居厩舎)
父:シンボリクリスエス
母:シーザリオ
母父:スペシャルウィーク

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『3時現在の入場者数を申し上げます!』の声に一瞬場内が静まった。そして『100,186人です!』にドッと歓声があがる。朝の1Rからパドックの廻りには人、人で溢れていた。最終的にはもっと増え、11万人に近い人がこの豪華メンバーのジャパンカップをひと目見ようと集ってきていた。
2番手のインコースと積極策のエピファネイア。ラスト300を待たずに、スミヨンJはゴーサインを出す。スルスルと後続を引き離して、あっと言う間に追いつけないほどの決定的な差が出来る。外からジャスタウェイが脚を伸ばして来たが、すでにエピファネイアは遥か前方と思える程の差。3連覇と思われていたジェンティルドンナの伸びもない。後ろから来たスピルバーグの勢いに圧倒されて4着だった。ただただ、エピファネイアの強さだけが目立ったジャパンカップであった…。


昼過ぎの6Rアサクサスターズの斤量が56.5キロに変更になった。スミヨンJが56キロで乗れないらしい。パドックへ向かおうとした時、後ろから横山典Jが声をかけてきた。《調整ルームに入らなくていいから減量してないんだろう…》と言う。あ、そうかWSJSの騎手は、以前からジョッキールームに缶詰にならなくていいはずで、ホテルで滞在で当日バスでやってきたのを観た事もあったっけと思いだす。余裕なのかナメているのかと心の中で少し憤慨するが、日本がキッチリ過ぎて、だいたい外国はアバウトなんだというのも訊いた事があった。ま、些細な事を気にしても仕方ないなと忘れる。
時がどんどんと過ぎて、いつの間にかJCのパドックへ馬が入ってくる時間となる。もう人、人、人でパドックで、いつも見る場所へなんて入りこむ隙間もない。馬が入ってきて周回しはじめても、馬の脚元まで観れない。ひと廻りしたところで断念して馬場入りを待つ。

ところが馬場入りしても、いつも1コーナーへと返し馬をしていくのだが、ダービーとこのJCは、4コーナーの方へと、ほとんどの馬がキャンターで背中しか見えない。僅かにワンアンドオンリーだけが、ダービー時と同じ様に2000mのポケット地点へと向かったので、この馬だけしか見れず。結局、今年のJCは馬をジックリとは見れなかった。パドックでチラ観をした感じでは、どの馬も仕上げてきているな~と思えるもの。《やや、ジェンティルドンナがいつもよりも入れ込み加減かな~》と思ったぐらい。《どこからでも攻められる金太郎飴みたいなレースだな~》なんて思っていた。

レースはあえて振り返らない。馬券で応援していた馬が上位に来た人達は、何度観ても楽しくて仕方ないだろう。だが大勢のファンは悔しい想いをしたはずである。1番人気が4着と、馬券に絡まなかった。3連複もワイドでさえもかすらないのである。そんな時に自分が信じた軸馬が4着だし、切った馬が勝ち負けしているのであろうから、そんな話を聞いたり観たりしても、嬉しくも思わないはずだ。
感じた事は、ジェンティルドンナもいつもの競馬をしていながら、最後に甘くなっていた。前の馬が加速しているのに、自分が伸びてない。まして後ろで故障馬のアオリを喰ったスピルバーグが馬群の中を割って出てきているのに差されているのである。

イスラボニータも、蛯名Jがこれ以上はないと言う程に追い出しを我慢していた。それなのに、いざ追い出したら何も残っていなかったと言った感じ。微妙なラスト1ハロンなのであろうか。
ハープスターも、3角過ぎの前から故障馬が下がってきた時のアクシデントがあった様子。ただ、それがなかったら勝っていたかは無理だっただろう。何せ、ジャスタウェイの福永Jの追い出しも完璧だったはず。しかしそれでいて、4馬身先にエピファネイアがいるのだから。他の馬では負かす事も2着に来る事も出来なかったに違いない今年のJCなのであった。

火曜朝の坂路。角居師須貝師も顔を見せなかった。橋口師だけがいつもの席で報道関係に応対していた。《2着馬からはそう差がなかった。不利は横で故障した様で、影響はなかった。この後の予定はまったくの白紙です》と応えていた。
スミヨンJが《今まで乗った日本の馬で一番強い》と言ってましたね~と私が尋ねると、橋口師は『いや~、オルフェーヴルの時もそんな事を言っていたからね』と、リップサービスなのか、高揚して語っているのだと気がつく。報道をどうしてもそのまま読んでしまう当方。甘いな~と感じる。

武豊Jヒットザターゲットが帰ってきた時に馬上から、《時計があまりに速すぎる。2秒速い》と言っていた意味が、時間を経て段々と判ってくる。ホーリックスでの時が2.22.2。それがしばらく破られなかったのを、アルカセットが2.22.1で更新した。ウオッカの勝ち時計が2.22.4。一昨年のジェンティルドンナの勝ち時計と同じ2.23.1である。それも昨日はかなり水を含んでいた馬場コンディションだった。今日も昼から良馬場発表とはなったが、走りやすい馬場とは決して言えなかったと思える。12ハロンの競馬で、そのうちの8つが11秒台で推移した。前半1000mが59.6と、けっこうな入りだ。3コーナーあたりもけっこう速いラップが続く。そして極めつけは、最後の3F。11.9~11.5~11.8と、まるで上がり勝負の決め手合戦みたいな数字だ。エピファネイアが後半の2Fを造ったものであるが、タフな馬場でこの切れである。

キズナが勝ったダービーでのビデオを何度も見る度に、あの3角手前のアクシデントがなかったらと、エピファネイアの底力を知っているだけに、今回のこの強さの理由も知ってはいる。あと数日するとキズナも帰ってくる。ライバルが先に強烈な印象で勝った。強力なライバルがいる。それが競馬である。毎回、毎度。競馬の奥深さばかりをみせつけられている…。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。