元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
ストレート
2017/8/3(木)
皆様、こんにちは!早実・清宮幸太郎選手の夏が終わりましたね。まさに怪物と呼ぶに相応しい選手の終わりは悲しいものがありますが、次のステージが非常に気になりますね。プロ野球への道か、それとも大学進学か。私個人としては、怪物のプロ挑戦も期待したいところではありますが、大学でさらなる進化というのも悪くはない道かもしれません。そして、その際には是非、我が巨人軍のユニフォームに袖を通してくれたらいいなと願っています。
さて、野球のストレートならぬ、競馬界のストレート、名物アイビスサマーダッシュが新潟で行われました。ベルカントの連覇から同じ勝負服フィドゥーシアでの3連覇を期待したレースでしたが、千直の鬼・西田雄一郎君が騎乗したラインミーティアが見事、8番人気をひっくり返す勝利を挙げました。レースはスタート直後から、好枠をゲットしたアクティブミノルが逃げる形となり、すぐ後ろにフィドゥーシアがつけました。
少しペースが早いぞ!と思っていましたが、残り100mでもフィドゥーシアがハナにいる展開にこれは決まったか!?と油断していると、道中から馬に気合いを入れ続けていた西田君とラインミーティアがゴール前で交わし見事な勝利を収めました。西田君にとっては、7年ぶりの嬉しい重賞制覇となり、3回中2回がこの重賞制覇となりました。相性の良いという次元ではなく、本当に1000mレースのコツを知っていると感じさせられました。
その他には、小倉ではエルボー事件がありましたね。ミルコが川田君に対し、馬上でエルボーを入れた事象により、10万円の罰金となってしまいました。これに関しては、騎乗停止になってもおかしくないと思いましたが、ギリギリのところだったと思います。今回、ミルコがやった報復行為は100%悪いですが、その前の川田君の乗り方は非常に良くありませんでした。
前回のレースを見直すとミルコ騎乗の馬は少し口が効きにくく、制御が大変な馬でした。そのため、スタートよりハナをきることを目指し強くプッシュして行きました。しかし、行き脚の速かった川田君がすっと先頭に立つも、まだ半馬身ほどかぶっている状態から内へと入れてきました。川田君からすれば引いてくれよ!という思いでしょうし、ミルコからしたら口が利かないことに加え、頭を入れていたこと、声を掛けたことからも「抜き去ってから入ってくれよ」という思いだったのでしょうね。
今回のように相手が内にいた場合は、1~2馬身程前に出してから内に入れるのが騎手としてのルールだと私は思います。気をつかって引けというのが当たり前になれば、レースとして上位騎手が逃げたら誰も行けなくなってしまいます。その上、今回はスローで逃げたいがためにスピードを上げず、強引にカットした結果となりました。それによりミルコと藤懸君の進路がなくなりました。これは落馬事故に繋がる可能性が一番大きい乗り方です。また、すぐに謝っていればこんなことにはならなかったのでしょうし、これを戒告という採決結果には少し疑問が残りましたね。こちらも原因や乗り方として罰金でミルコには騎乗停止2日でも良かったと思います。
メディアだけを見るとエルボーで罰金!とありましたが、しっかりと起きた理由とそれに対しての説明がある記事がひとつもありませんでした。どちらも危険な行為をしたことは確かですし、これも競馬です。お互いが今回の裁決で反省し、挑まなくてはいけません。ただ、騎手として少しでも勝ちに行くための今回のような気持ちは大事にして欲しいと思います。素晴らしい騎手の2人ですから、来週にはまた反省した素晴らしい騎乗を見せてくれると期待しています。
今週は新潟でレパードS、小倉では小倉記念が行われます。まずは何と言ってもレパードSに出馬予定のエピカリスに注目が集まりますね。渡米するも最後の最後で出馬することができず、悲しみの涙となりましたが、今回は万全の態勢で出馬してくると思います。しかし、砂の怪物に挑む相手も、タダでは黙っていないと思います。その筆頭になるのが、アディラートやタガノディグオになるのではないでしょうか。その他にもダート初挑戦のイブキも面白い存在だなと思っています。
年齢を重ね、能力差が縮まったのか、それとも怪物の才能が更に開いたのか。それを確認する一戦になると思います。新潟の名物1000mのド迫力やグルメ小倉や涼しい札幌、楽しい楽しい夏競馬!夏競馬も是非、生観戦で!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。