元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
横綱
2017/11/22(水)
皆様、こんにちは!世間は日馬富士関と貴ノ岩関の問題で揺れていますね。実際、内容は言う人言う人で違うので真相は分かりませんが、本当に怪我をしているなら怪我をした本人が出てきて話してくれたらいいと思うのですがね。どちらにしても、やられた方もこの様な事件になってしまうと思っていなかったでしょうし、やった方に関しても同じことが言えると思います。礼儀を重んじる相撲界の中で、なぜこのようなことが起こってしまったのか。もう一度、見返す時期がきたのではと思います。外国人力士が強いのは分かりますが、強いだけではダメなのが横綱。それをもう一度、考えて欲しいです。
競馬界では強いだけでなく日本を愛し、日本競馬の貢献を心から願っている騎手ミルコがマイルCSでまたもや、やってくれました。今回の勝利でG1・3連勝を達成し、G1連続連対記録を10に伸ばしました。ここまでくると、本当に日本を代表する横綱騎手と言っても過言ではないと思います。そして、設立して初のG1勝利となったG1レーシングさんや管理する池江調教師にとっても今回のレースへの英断は勇気がいったことだと感じました。ダービー後に選んだ路線はマイルでした。菊花賞への挑戦は一生のうち一度しかできません。しかし、馬のことを考え選んだ道は成功への道だったということだと思います。
レースはスタート直後、五分に出たペルシアンナイトでしたが、外枠やレース展開からミルコは腹をくくりましたね。ひとつでも間違えれば、なぜ無理に下げた?なぜ内に入れた?と批判されるかもしれないことよりも、この馬でこの条件を勝つには批判されてもギャンブルするしかないのを、一番分かっていたのでしょうね。ペースは逃げるマルターズアポジーにしっかりと後続も繋がって、ペースとしてはやや早いと感じるレースとなり、これは前が垂れるのを嫌って外に広がるぞと見ていると案の定、外へと多くの馬が集まる中、ミルコは持ったまま4コーナーでインへと導きました。手前を換えるまで、少しよれたことによりインを狙ったように見えましたが、すぐさま視線を戻すと外にいたエアスピネルを狙いうちするようなコース取りをしました。そこからは、ミルコの真骨頂、鬼の追いにより見事3歳馬での快挙を達成しました。
これで年間G1勝利数を6にし、ミルコはタイ記録を達成と記録づくしの勝利となりました。しかし、今回のペルシアンナイトを選んだこと、そして見事に勝たせたことは素晴らしいの一言ですね。毎レース毎レース、このように人気をしている馬、していない馬でも、少し足りないと感じた時には少しでも勝つ方法を模索していることで、本番でも挑戦することができ、更に成功を収めることができたのだと思います。この勝利はそういったトライをしている騎手だからこそ、もぎ取れた結果だと思います。素晴らしい勝利でした。
さて、今週もしびれるレースを期待しましょう!今年最後の東京競馬場で行われるG1・ジャパンカップが行われます。海外から4頭の馬が参戦することになり、国際色豊かなレースになることからも楽しみでしょうがありません。しかし、日本の横綱キタサンブラックが日本代表として立ちはだかろうとしています。勿論、私の注目もキタサンブラックになります。前回出遅れただけでなく、あの馬場でもいかんなく発揮した力は、まさに横綱。今回は相棒の豊ちゃんがまだ完全じゃない部分だけが気がかりといったところではないでしょうか。
そして、ムーアの影響か騎乗がなかなか決まらなかったサトノクラウンとミルコにも注目が必要です。雨だけで走っているのではないということを証明したいでしょうからね。その他にも3歳馬チャンピオンのレイデオロも万全の体制ですし、ロンジンジョッキーランキング1位になっているボウマンとのコンビになったシュヴァルグランも虎視眈々と頂点を狙います。まさに横綱を倒そうと他馬が目の色を変えてくるでしょうし、熱い戦いがあるのではと思っています。力だけでなく、心の熱い戦いを願っています!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。