元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
ベテランの技
2020/1/22(水)
皆様、こんにちは!この間、やっと録画しておいた大間のマグロ漁師の山本さんの番組を見ることができました。昨年の大間は不漁で、漁獲量が3分の1にまで下がっていたと聞きました。大好きなお寿司が高くなる恐怖を感じましたが、番組ではあまり釣れない山本さんが3本もマグロをあげる内容に大興奮でした。いつも釣っている漁師が全くの中で、父が残した服を着て釣り上げたシーンはすごく感動しました。偶然でしょうが、その様に強く思いを込めるということが力になることは必ずあると思います。今年も本当に面白い番組でした。山本さんファンとして、今年の山本さんは一味違いましたし、まさにベテランの技でしたね。
それでは先週の競馬の話をしましょう。オリンピックや京都競馬場の工事のため、慣れたスケジュールではなく少し戸惑うところもありましたが、小倉・中山・京都の3場開催が始まりました。早速、小倉競馬場ではスケジュール変更により、名前と場所の違和感がありましたが愛知杯が行われました。この時期に、小倉で一流騎手たちが見られるとあり、大変盛り上がったと思います。
レースは、ベテランの技が光ったレースだったと思います。追いかけていると本当に楽しいデンコウアンジュとベテラン善臣君のペアが最高の競馬をして勝利を上げました。スタートしてからは内でじっと我慢し、迎えた4コーナー。小回りで振られる他馬のスペースを逃さずに確保すると、最後に手前を換えながら、そのまま再度内へと伸びさせたベテランの腕は流石の一言でした。善臣君というと若い時に朝が弱く、よく起こしたのを未だに覚えているだけに、そんな彼がベテランになり、諦めずに勝ち切ったレースは、若手大勢が出てくる中でも存在感を出してくれたマグロ漁師山本さんとかぶるところがありました。
雪の土曜日から晴れへと天気を変えた日曜日の中山競馬場では京成杯が行われ、吉田豊君が復帰後初の重賞勝利を上げました。本当に嬉しそうな顔を見ていると、こちらまで嬉しくなりました。このレースはなにか2013年のダービーを思い出させてくれましたね。ケガからなかなか本領発揮できずに悩んでいた武豊ちゃんが、キズナでエピファネイアを差し勝利したレースです。たしか、勝利した豊ちゃんの帽子は白帽で、エピファネイアは黄帽でした。しかも、勝利したクリスタルブラックはキズナ産駒、そして2着にやぶれたスカイグルーヴがエピファネイア産駒だったことも偶然のようで偶然ではないのかもしれません。
クリスタルブラックの一発の脚は本物ですね。本当に素晴らしい末脚で、クラシック上位陣に食い込んでいける力だったと思います。牝馬ながら2着に入ったスカイグルーヴは枠もありましたが、1頭になりフワフワとした走りになって更に坂で止まってしまっていたことからも、マイル路線で見たいなと思いましたね。こちらは桜花賞でレシステンシアにとって脅威の相手になると思います。さらに言えば、NHKマイルでみたい馬ですね。
今週も3場開催です。日曜日に中山でアメリカJCC、京都ではこちらもスケジュール変更から名前が気になりますが東海Sが行われます。注目は何と言ってもAJCCに出てくるブラストワンピースのデキ映えですね。ここのメンバーでは負けられない一戦ですし、結果もですが春に向けて内容がほしい一戦だと思います。ミッキースワローも楽しみに見ていたいです。気を抜けた時のスティッフェリオもグローブシアターやニシノデイジー次第では楽な走りができるでしょうから非常に楽しみですね。どちらにしても、ここは負けられないブラストワンピースの走りに期待したいです。是非、今週は形見やパワーのあるものをもって挑んでください!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。