元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
陣営の我慢と一流の経験
2021/6/8(火)
皆様、こんにちは!全米女子オープンゴルフで笹生優花選手がやってくれました。まさかの日本人プレーオフで私の次男が働いていたアビームコンサルティング所属の畑岡選手とのマッチプレーを制し、19歳でメジャー大会を制するという快挙を成し遂げました。小さな頃から練習に明け暮れ、まるでタイガーウッズのように厳しい環境で努力をしてきたことの結果が出たことを、非常に嬉しく思います。オリンピックにはフィリピン代表として出場を表明しているだけに、日本にとって非常に怖いライバルになるでしょう。
このプレーオフはヴィクトワールピサが制したドバイワールドカップが重なりました。直線残り200mで日本馬2頭が争う姿に、ゴールする前に涙が出たことを思い出しました。結果は長男が調教をつけていたヴィクトワールピサの勝利で、より感動したことを昨日のことのようにまだ覚えています。スポーツにしか生み出せない感動をもらえた素晴らしい瞬間でした。世界に戦える若手が騎手同様でてきていることを嬉しく思います。
それでは競馬の話をしましょう。先週日曜日には東京競馬場で安田記念が行われ、8番人気になっていたダノンキングリーが見事な初G1をダノン主戦の川田君と成し遂げました。とても素晴らしいレースで川田君、ルメール、そして横山武君という争いは、ダービーでの感動を更に大きくしてくれる結果にもなりました。ダノンキングリーと言えばダノンレジェンドの弟にあたり、G1には少し届かないと思っていました。
しかし、去年から陣営が判断した休暇とトレーニングの変更により、以前よりかはトモの入りがマシになっていたと思います。まだ緩さを感じるくらいですが、それでも成長し、ここまで仕上がったのは陣営とずっと乗っていた戸崎君の賜物だと思います。そこに川田君が先入観のない状態で馬のリズムを大事に乗ったことが噛み合った勝利だと私は思います。一流馬に多く跨ってきたことで経験が血や肉に変わり、本当に素晴らしい騎手だなと感心させられるレースでもありました。
2着には内から迫ったグランアレグリアが入りました。こちらはやはり見えない疲労か、在厩でいつもと違うステップでレースに臨んだためか、馬がボーっとしているような雰囲気になり、いつもならばスタートからルメールが最高峰の技術で抑え込みながら直線に弾けさせるのですが、抑え込むどころか追走が大変なように見えるレースでした。最後は圧巻の能力で迫りましたが、今回は致し方ない敗戦になりました。3着にはダービーで悔しい思いをした横山武君と3歳馬シュネルマイスターが入り、若いモノ同士で力を見せつけてくれました。素晴らしい叩き合いに痺れたレースとなりました。
期待していたサリオスは内枠でリズム良く運ぶことができず、また心配していた中距離からマイルでのペースの違いにもやられた形となってしまいました。今の走りならばマイルが短くなってきたかなと感じました。名門堀厩舎のことですから次もマイルならばマイル仕様に作ってきてくれるでしょうし、中距離でもしっかりと対応してくれると思います。長い距離→距離短縮はどうしてもレースに行ってペースを一度慣れさせないと厳しい面がありますからね。引っかかる馬などは短縮もすぐに歓迎となりますから一概には言えませんが、この経験を覚えていてくれたらと思います。
今週からは札幌開催の開幕です。例年ならば関係者は北海道開催が楽しみで仕方ないのですが、今のコロナ禍では気候だけを楽しむようになることでしょう。関係者も札幌に行けることに浮かれず、開催させてもらえることを当たり前と思わず、感謝を感じながら行動してもらいたいなと思います。そんな札幌開催では早速、重賞が行われます。オリンピックの影響からスケジュール調整により札幌で函館スプリントSとなってしまいましたが楽しみなレースになりそうです。1番人気にはカレンモエが推奨されると思います。父、母と安田隆厩舎の結晶のような血統だけに、ここでの活躍をどうしても期待してしまいます。
しかし、個人的には穴候補から大荒れ馬券が出るのではないかと思っています。その筆頭になるのがアルピニズムになります。開幕馬場に小回りはこの馬にとってプラスに働く気がしていますからね。その他に50キロの斤量に期待したいシゲルピンクルビーもいますし、ハナ争いの速さならばビアンフェも侮れません。中竹厩舎の北海道短距離での重賞というのはどこか成績が良いイメージもありますからね。今週も期待を持って東京、中京、札幌開催を楽しみましょう!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。