元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
負ける覚悟+攻める覚悟
2022/11/24(木)
皆様、こんにちは!昨日のワールカップ・日本戦は御覧になられましたか?ドイツに感動の逆転勝利には涙が出ました。戦前から苦戦必至というグループに入り、今年のW杯は楽しめないかと思っていた方も多かったと思います。その中でも、前回大会で負けた時から選手一人ひとりは諦めなかった。そして、明確に成長するためのポイントを絞ってきました。前半はハッキリいって絶望を感じる展開でした。相手が13人くらいいるのではないか?と思うほどパスを自由に回され、まったくサッカーができませんでした。
しかし、ハーフタイム。森保監督は選手に攻めるしかないと一気に攻撃的な布陣へと変更させました。今までの日本は大負けしたくないとどこか中途半端な戦略だったのが、大負けするか勝ち越すかというスタイルを選んだことには震えました。そして、ギャンブルに勝ってドイツを倒した。もう見事の一言でした。残り2戦とも、まだまだ油断できない戦いになります。どうなったとしても日本代表の決意を応援しましょう。
先週は阪神競馬場でマイルCSが行われ、セリフォスとレーンのコンビが見事な脚で差し切り勝利しました。3歳での勝利に同じ勝負服ということもあり、ペルシアンナイトをイメージした人も多かったのではないでしょうか。レースはスタートからロータスランドが出るとハナはピースオブエイトが奪いました。外からはファルコニアが少し行きたがる形に。ペースとしては平均的で、あとは馬場の状況からも外が伸びてくると思っていましたが、案の定、外の取り合いとなりました。
その状況を見て、外は無理という早い判断でロータスランドは内を選び、一旦は先頭に出ました。これは勝てる!と思って矢先、外から一気にセリフォスが差し切りました。才能はすごいと期待していたところはありましたが、夏を超してここまで来たかという強さだったと思います。ダイワメジャーは種付けもPrivateに変わってしまったと聞いていますし、その後継者になるためにこの後も勝利を重ねてほしいと思います。
2着にはダノンザキッド、さらにソダシの順での結果となりました。ロータスランドしかり、ソウルラッシュしかり、雨予報が晴れたことで着順を落としてしまいましたが、雨が残っていれば2,3着はこの馬達だったかもしれないと思わされましたね。とりわけ岩田望君は勝つための競馬をしたなという印象が残りました。今までは無難に上手く乗ろうとしていましたが、今回のG1では勝つために何をするべきかと日本代表のように攻めた結果だったと思います。こういうトライをしてくれる騎手はもっともっと伸びると思います。素晴らしい勝利の後ろに若手の決意が見えたレースで頼もしかったです。
今週は東京・阪神の2場開催です。東京競馬場で海外から多くの馬が参戦をするジャパンカップが行われます。来年から賞金も更にあがる国際G1ですから、注目度も上がっています。海外勢にも十分勝つチャンスがあると思いますし、逆に日本勢としてもホームで負けられない一戦になります。その中でも、私の注目はダノンベルーガになります。全国リーディングの川田君が乗る予定ですし、日本代表として負けられないところでしょう。
ダービー馬シャフリヤールや3冠牝馬デアリングタクトも、とりわけこのコースでは勝ちたい一戦になります。その他では海外勢が怖いですね。特に日本を知り尽くしたルメールとオネストのコンビは何か波乱を起こしそうな予感もしています。サッカー日本代表の勝利に胸を熱くした騎手も多いはず。是非、勝つための決意を持ったレースで勝負を懸けてもらいたいと思います。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。