元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
代打の神様
2023/11/23(木)
皆様、こんにちは!本日は大阪、神戸でプロ野球の優勝パレードが行われましたね。両リーグとも関西チームということもあり、どちらのパレードに参加される人も多かったようです。私は巨人ファンだけに悔しいパレードとなりましたが、阪神では代打の神様、八木選手が好きでした。チャンスになるといぶし銀のように出てきてはしっかりと点数を稼ぎ、仕事を全うする必殺仕事人のようでしたからね。彼のような渋い働きをする選手はついついと応援してしまいます。
先週はマイル王を決める戦いマイルチャンピオンシップが京都競馬場で行われました。午前のレースでライアン・ムーアが落馬負傷となり急遽、藤岡康太君に乗り替わったナミュールが見事な末脚で勝利しました。藤岡康君といえば、ワグネリアンでの代打勝利も思い出されますし、マカヒキも乗り替わった後に勝利を挙げるなど、代打の神様のような結果を残してくれています。
騎手としては代打という言葉は評価が下だと感じてしまうかもしれません。それでくさってしまう騎手も多くいると思います。しかし、彼はそれでも常に準備を行い、代打ではなくレギュラーになることを望み、コツコツと積み重ねてきました。その結果が今回の勝利だったと思います。結果が出れば環境が変わることもあります。今回の勝利で環境が変われば、彼はまだまだ輝けるのではないかと思っています。
ナミュールも、とてつもない脚を繰り出してくれました。2歳から注目を集めつつもG1が遠かったですが、前走モレイラとのコンビでの勝利から今回と、本格化したことを結果で示してくれました。スタートは少し後手を踏みましたが、モレイラからのアドバイス通り、彼女をどれだけリラックスさせることができるかが重要なポイントだったと思います。そこで藤岡康君は直線一気を決め込んだのでしょう。代打で展開が向かなければ自分のせいと思われても仕方ないレースの中、勝つための選択をしました。
4コーナーで抜群の手応えだっただけに前を行く馬に少しぶつけながらコースを開けると、素晴らしい脚で差し切りを決めました。他馬にひるまず鬼脚での勝利は気持ちのいいレースでした。雨の影響が心配されていましたが、晴れて乾いてきていただけに外差し馬場になったことも吉と出ました。2着にはモレイラ騎乗のソウルラッシュが入りましたね。調子が本当に良さそうで、馬場の乾きが遅れていればこちらが勝っていたかもしれません。こういった馬は欧米での走りも見てみたいなと思いました。
今週はジャパンカップが行われます。注目の最強馬決定戦、奇遇にも同じ枠に入った2頭がどういった競馬をするのか非常に楽しみです。その2頭とはもちろんイクイノックスと3冠女王リバティアイランドになります。斤量差が4キロある今回はリバティアイランドにとっても世界最強馬を倒す最大のチャンスだと思いますし、イクイノックスとしてはレベルが違うところを見せつけたい一戦でしょう。
そこにタイトルホルダーや、外枠に入ってしまいましたが世界でもTOP5に入る上手さがあるビュイックとスターズオンアースのコンビは非常に楽しみです。ステーキと寿司、サイドにも豪華な料理が並んだパーティーのようなレースだけに、勝負する馬券は直前まで悩んでみてください。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。