'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
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勝利数
11月11日時点1556勝
1番人気で敗戦… スプリンターズS、いちょうSを振り返る
2014/10/19(日)
条件が堪えたスプリンターズS
-:スプリンターズS(G1)のハクサンムーン(牡5、栗東・西園厩舎)は左回りが堪えていたのではないですか?走りを見ていると……。
戸崎圭太騎手:そうですね。直線でもフラついていて、まともに乗れなかったですからね。
-:そのフラついてた原因は左回りだけによるものですか?
圭太:どうなんですかねえ。左回りもあるのかもしれないし、あの馬も原因は分からないですね。僕はあの馬のリズムで行こうと思ったんですよ。ハナに行っている時が走って(結果を残して)いますけど、それだけの馬ではないと思っていたのでね。スタートは上手に出てくれて、行ければハナにも行こうかと思っていましたが、内から他馬がしごいて来たので、あれでハナに行ってしまうとペースも速くなるし、馬場も内側が荒れていたんでね。だったらハクサンムーンのリズムで行った方が良いな、という考えはあって、ああいう運びにはなったのです。結果として、ハナに行った方が走れたのか、その辺はちょっと分かんないですが、あのレースは僕の考えで行きましたね。
-:そこに悔いはないですか?
圭太:僕はないです。
-:悔いがないのだったら、結果は悪かったにせよ、良かったですね。
圭太:もちろんハナに行ったらどうだったのかな、という思いもありますが、あとはもっと良い馬場で、スピード決着の良い馬場でやれたらもっと良い条件だったかな、という感じはしますね。
-:もともと手前の替え方がそんなに上手じゃない方ですよね。
圭太:右回りの方がスムーズでしたけどね。それに、展開などは人それぞれのとらえ方もあると思いますし。ただ、馬場はに関してはあの日の条件はちょっと嫌でしたね。
-:けっこう荒れていて、硬いけどボコボコしているような馬場でしたか?
圭太:水分を含んでいましたね。多少ですが、その日もパラパラと雨が来ていたので。その前の週の方が馬場は良かったですね。荒れてはいたものの、馬場は乾いていましたから。
-:確かに意外にも先行勢が残っている感じがしましたね。
圭太:そうですね。あの週の馬場ならば、とは思っていたのですが。
輸送、左回り、キャリア?原因不明のサトノフラムの敗戦
-:いちょうS(重賞)のサトノフラム(牡2、栗東・安田隆厩舎)は残念な結果でしたが、敗因はどのように捉えていますか?
圭太:う~ん、正直分からないですね。返し馬の雰囲気も、道中も凄く良い感じで行けたと思っていたので。直線で追い出したところで、伸びがなかったのですが、本当に分からないですね。4コーナーで少し踏んでいった時、仕掛けたところでの反応が少し鈍かったので、そこは不安にはなりましたが、またそこから伸びてくるんだろうな、という感じで乗っていたのでね。全然その後(の伸び)がなかったので、“アレッ”という感じでした。突き詰めれば、原因は色々あるのか……。ただ、どれがダメなのか、というのは分からないですね。
-:状態面、調整という点では前回と比較すれば、初めての長距離輸送という課題もあったと思うのですが、そこも踏まえるといかがですか?
圭太:プラス体重で来ていましたし、イレ込み(なく)も雰囲気も良い意味で変わりなく来ていたので、その辺の心配はなかったですね。
-:追い切りの雰囲気なども。
圭太:見ていると抜群ですからね。
-:あれを見たら、なかなか負けようはないのかと思ってしまいますよね。レースでは少し手綱を引っ張っているようにも見えましたが、左回りも課題にはありましたか?
圭太:う~ん、ないと思います。
-:そもそも気性的にはどんなタイプだったのでしょうか?
圭太:もともとは子供っぽくて、何かヤンチャなところを見せるようなタイプで、、最初は大変だったみたいです。それでも新馬の時は返し馬から全然大人しくて、雰囲気も良かったので、レース中も普通にすんなり回ってくれたので、そういう面では新馬も気負うところがなかったですからね。
-:次は走りそうな手応え、巻き返せそうな可能性は感じられますか?
圭太:新馬の勝ち方や追い切りなどを見ていると、走らない馬ではないでしょうからね。
-:先生(安田隆行調教師)とはどんな話をされましたか?
圭太:今の話をしたくらいで、先生も「悪かったね」と言ってくれたんですけどね。
-:安田先生とか厩務員さんから見て、感じられる敗因はあったのですか?
圭太:いや、そういうところはなさそうでした。僕と同じように、道中もリズム良く行けたし、直線で伸びがないな、という思いはあったようでした。馬が話してくれれば一番分かるんですけどね(苦笑)。馬にも走らなかった理由が色々あるんじゃないかな、という感じですね。この後は休みに出すということだったので、仕切り直して頑張りたいですね。
馬場読みに成長をみせた移籍2年目
-:オールカマー(G2)のマイネルラクリマ(牡6、美浦・上原厩舎)はテン乗りながら見事な結果でしたね。
圭太:調子も良かったみたいですし、あの週の馬場には合っているというか、悪い馬場でも頑張れそうな馬でした。スムーズに前に付けられたのも良かったですね。まあ、乗りやすいことが一番良かったと思いますね。
-:乗る前に「良い馬が回ってきた」といったことを珍しく言っていましたね。
圭太:そうですね。ここならば上位の馬だと自信を持っていましたからね。
-:しかし、内回りコースで上手く立ち回ってのソツのない競馬でした。
圭太:センスの良い馬ですね。展開的にも向いてくれました。
-:夏の新潟開催は28勝、重賞2勝の結果でダントツのリーディングでした。夏を通して振り返っていかがでしたか?
圭太:後半はちょっと読み辛い馬場になっていましたけど、たくさん良い馬に乗せていただいて、リーディングも去年の悔しさを発揮出来たのかなと思いますし、良い開催になったかなと思いますね。
-:でも、馬場を読むというのは、去年からの一つの課題じゃないですが、そこはご自身でもテーマに挙げられていたと思います。その慣れなどはありましたか?
圭太:去年よりも随分と高まったかなと自分では思っています。まだまだなところはありますが、逆に去年よりは面白さも感じていますし、幅が広がったというのはありますね。
-:そう言った時は、誰かマークするのですか?この人がここを通っていたから信頼出来る、とか。
圭太:いや、僕はないです。あくまでレース全体を見て、イメージを掴むようにはしていますね。
-:それでも、週ごとに傾向がコロコロと変わってくる訳ですよね。
圭太:週ごともありますし、午前中と後半で違う時もありますので、なかなか難しいところですね。その週の降水量も影響するので、週中から天気予報は気にして見ていました。それは去年に比べたらするようにはしましたね。
-:それがハマったというレースはありましたか?
圭太:それが合っているかどうかも分からないのでね、僕がそう思っているだけでも。でも、ハマっているレースもあったのかとは思いますが……。
-:でも、成績自体、トータルとしてはマズマズでしたか?
圭太:そうですね。でも、納得はいっていないですよ。僕は納得がいくことはないので。
-:どちらかと言えば、スポットで行った関西で固め打ちしているイメージです。
圭太:あんまり行かないからじゃないですか。
-:あとは午前中?
圭太:最近よく言われます(笑)。関係者にもよく言われます。
-:でも、モチベーションや体力が変わるということはありませんよね。
圭太:変わらないです。たまたまそうなってしまっているだけで、そこは反省しなきゃいけないといっても……。前半と後半で変わっている訳でもないのでね。かといって、「後半の騎手」にもなりたくないのでね。安定する騎手になれればなと思います。
-:安定かつ大胆さがあればということですね。
圭太:そうですね。
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。