'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
人気コーナー!トップジョッキーならではの本音、レースへの意気込みをお届けします!
12月16日時点1567勝
エプソムCはサトノフラッグとの再コンビ 安田記念の悔しさ、歯がゆさ胸に決意
2021/6/11(金)
東京の連続G1が終わり、サークル内は本格的な夏競馬モードへ移行していくところ。今週はエプソムCのサトノフラッグなど乗り鞍も多数予定しているが、例年夏競馬は好相性だけに勝ち星の量産を期待したいところだ。また、先日の安田記念では主戦を務めてきたダノンキングリーが乗り替わりでの勝利。その胸中についても本音を語ってくれた。
土日東京で20鞍!騎乗経験のある馬が続々
——東京開催での連続G1もひと区切りとなりました。今週は騎乗経験のある馬が多いですが、週末の騎乗馬について伺えればと思います。まず土曜7Rのパラノイド、芦ノ湖特別のメッシーナはどうでしょうか。
パラノイドの前走は昇級初戦で良いレースをしてくれましたね。古馬相手になりますが、引き続きいい走りをしてほしいもの。展開的には少し差しが向いてほしいですね。メッシーナは折り合いが大事になってきますね。勝たせていただいたことはありますが、折り合いが一番鍵になるイメージです。
——三浦特別のカイアワセ、最終レースのフラワリングナイトも今春の東京で騎乗されましたね。
カイアワセはセンスのある馬でどんな形にも対応できる印象です。ダート馬らしいパワーがあるというよりは乗り易さが持ち味ですね。フラワリングナイトも前回でキッカケをつかめたところはあるものの、競馬のメリハリがついて欲しいタイプですので展開は鍵になりそうです。
——ジューンSのメロディーレーンはテン乗りですね。
人気のある馬ですね。小柄な馬ながらしぶといようですし、どんな走りをしてくれるか楽しみです。弟のタイトルホルダーには乗せていただいていたので、その比較も感じられればと思います。
——日曜では4Rのスマートワンが前走は惜しいといいますか、相手が強過ぎましたね。6Rのウエスタンエポナは度々乗られてきた馬です。
スマートワンは本当に相手が悪かったですね。未勝利は勝てる馬だと思うので期待しています。
——2歳新馬のアニージョは追い切りに乗られたようですね。今週は他のレースで乗る予定だった新馬は回避してしまったようですが。
そうなんですよね。熱発で回避してしまったようで…。アニージョの追い切りは順調に動けていましたね。緩いところがあるので、あとは実戦でどこまで動けるか……です。ウエスタンエポナはフランケル産駒という貴重な血統馬ですし、早く未勝利を脱出できれば。間隔が空いているので、少しでも成長をしてワンパンチに欠ける面を補えればいいですね。
——八王子特別のアポロティアモは前走がマイルで騎乗されて、今回は距離延長ですね。
条件は替わりますけど、実績もあるのでこなせるんじゃないかと思います。ただ、真面目さに欠ける面があるのでそこを補えればと思います。
——夏至ステークスのマッスルビーチはもどかしい内容が続いていますね。
道中、噛むところがあるのでリズム良く行きたいですね。最後は脚を使ってくれるだけに展開も向いてほしいです。2走前に(柴田)大知さんが乗った際は逆に「進んでいかなかった」と言っていたので、やっぱりそれだけ違うということは気性が難しいからだと思います。
——最終レースのアラビアンナイトはオークストライアルのスイートピーSでも好走しましたね。
やっぱり東京も合っているのでしょうし、マイルの距離も合っていそう。このクラスでやれると思います。
——エプソムC(G3)のサトノフラッグはどうでしょうか。
追い切りに乗りましたが、順調に来ていますね。ただ、以前と比べて良くも悪くもそこまでガラっと変わったところはなかったです。というのも、どうも僕としてもまだどこが適性条件なのか手探りな点は否めないですからね。今回は距離が短くなりますし、新しい面が出てほしいですね。
乗り替わりで“勝たれてしまった”安田記念
——先週のレース回顧もお願いします。まず、安田記念(G1)のトーラスジェミニは番手から運んで5着でしたね。
状態は良かったです。本当はハナが良いのかもしれませんし、その辺りも頭の中にはありました。ただ、ダイワキャグニーのテンが速かったですね。そこから切り替えて運びましたし、最後までしぶとく粘ってくれました。
——過去のレースでは厳しいペースを逃げることも多々ありました。決してハナにはこだわらないタイプですか。
そう思いますけどね。あとは5着が良いのか、悪いのか……というところですね。
——母父がマンハッタンカフェ。マンハッタン産駒にも過去にはよく乗られていて、通ずるところはありましたか。
あ~それはありますね。感じました。
——追い切りでは良い動きをみせていましたし、今のデキでどんな走りをするのか注目していましたが、適性条件としてはどう感じられましたか。
マイルから2000mといったところでしょうか。次戦は七夕賞のようなので頑張れればと思います。
——ブッチーニは前回よりレース内容は良くなりましたね。ただ、1番人気馬と近いポジションで運んで、最後はひと押しに欠く内容。距離も長かったのでしょうか。
リズム良くいけましたし、前回を踏まえた乗り方もできたと思います。やっぱり最後は距離なのかなと。力を付けてくれればマイルもこなせそうですが、1400mの方が良さそうですね。
——新馬戦2着のサトノストロングはどうだったでしょうか。
同じ距離のエレボアブランシュ(4着)にも言えましたが、外枠で外を回らされたのが痛かったですね。サトノストロングについては次に繋がる内容でしたが、テンションが上がってこなければと思います。小回りの1200mだと厳しそうですし、ゆったり走れる条件が合いそうです。
——ディスモーメントは凄い脚で3着。前残りを考えればよく来たと思います。
折り合いが難しいですし、返し馬からもハミの乗っかかってくるような走り。競馬としては歯がゆいところはありますが、ああいうメリハリのある競馬をした方がいいんじゃないかと返し馬を終えてから感じました。あとは展開や馬場が噛み合ってほしいです。
——フォーテで挑んだアハルテケSはずっと続いていた連対が途絶えてしまいました。
先生とも話をして打ち合わせた通りの内容で運べましたが、最後は苦しくなってしまいましたね。
——リンカーンテソーロは馬群がバラけた最後は伸びてきていましたね。
周りの馬を気にするところがありますね。それだけに枠は良くなかったと思います。
——今週は大井競馬場で東京ダービー(S1)が行われました。ご覧になっていかがでしたか。
やっぱり的場(文男)さんが勝たないか、注目していましたが、残念でしたね。今年は羽田盃でコンビを組んだ馬が故障してしまったようですし、また来年ですね。
——「来年乗っているかわからない」とコメントされていたようですね。
あ~大丈夫、大丈夫(笑)。来年も乗っているでしょう!それにしてもあの年齢で続けているのだから本当に凄い、ケタ違いの人ですよ。的場さんにとって東京ダービーはモチベーションになっているでしょうし、来年も頑張ってほしいです。勝ち馬のアランバローズについては全日本2歳優駿でも走っていただけあって強い馬ですね。
——そして、先日の安田記念は乗り替わりになったダノンキングリーが勝つ結果になってしまいました。
正直、悔しいですし情けないのが本音ですね……。でも、以前ならばどれだけショックを受けていたんだろうと思いますし、流されるところはあったかもしれません。その中でも凄く前向きでいられるところはあります。ハッキリと自分がもっと上手くならないと思いますし、今後より上手くなるためにどうしていくか考えているところです。
——これまで乗り替わりで重賞やG1を勝たれるということはあるにはあったものの、ずっと乗ってきた馬の場合はなかったわけです。そもそもダノンキングリーに対しては思い入れも明らかでしたし、ジョッキーを応援している方々からするとショッキングな結果だったと思います。もちろんご本人が一番でしょうが。
本当に自分を応援してくれている人を思うと、というのはおこがましいけど、そんな人のことを考えると情けない思いです。ダノンキングリーについてはG1を勝てたことは良かったと思いますし、理想は自分が乗って勝てれば良かったけど、なにか今後、そういう馬と巡り会えたらいいなと思いますし、その際に力を引き出せる騎手でありたいです。
——聞き辛い話題ではありますが、良くも悪くも日頃、淡々としたコメントが多い中で、(それなりに端折ってますけど)今回はいつも以上に本音が出ていますね。
僕も本音を言えて良かったと思います。僕も上手くならないといけないし、改めて結果を残せるジョッキーになりたいですね。
——まだまだジョッキーとしては先の長い40代ですからね。そこを今後も追っていければと思います。
ありがとうございます!
——今後は東京開催以降、例年通り、福島・新潟となりますか。
そうですね。あとは北海道の重賞にも乗せて頂く予定です。
——宝塚記念(G1)のカレンブーケドールや帝王賞(Jpn1)のチュウワウィザードも控えていますからね。引き続きよろしくお願いします。
※次回は6月18日(金)に更新予定です!当コーナーは電話で取材を行っております。
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。