好評発売中の競馬ラボ雑誌「馬券新格言100」を皆さん、お求めいただけだろうか?今回は巻頭特集の一環として、収録済みだった戸崎圭太騎手と大井競馬時代の後輩・矢野貴之騎手とのスペシャル対談が実現。今回はその完全版を公開していく。競馬ラボではこれまでに幾度となく戸崎騎手の対談を行ってきたが、これまでとはひと味違うリラックスムードで行われた「本音トーク」をご覧いただきたい。

昨年の南関東リーディングジョッキーが初登場!大先輩・戸崎騎手との間柄は?

-:本日はよろしくお願いします。競馬ラボの雑誌発売記念として、元・大井競馬所属で南関東のリーディングジョッキーだった戸崎圭太騎手と昨年、初めて南関東リーディングに輝いた矢野貴之騎手に対談いただければと思います。お2人は8年間くらい一緒に乗られていたのですね。

矢野貴之騎手:僕が大井に来た時は、ジョッキーの一員として認められていないというか、自分の性格にも問題があって、4~5年はほぼ競馬に乗っていなかったですからね。

戸崎圭太騎手:確かに、僕が一番(印象に)残っているのは「騎手を辞めたい」というのを吉井さん(吉井竜一元騎手で騎手会長、現・調教師)に相談したんだよね。それは移籍してきてすぐだったかな。

矢:そう、すぐくらいで。

圭太:でも、向こうから来る時はやる気があって来たんでしょ?

戸崎圭太×矢野貴之

▲年齢は4つ違いの新旧リーディングジョッキー 昔話に花が咲いた

矢:やる気満々です。当時所属していた厩舎の先生がとかは関係なく、やる気満々で来て、高崎時代と同じことをやっているじゃないですか。それなのに環境が違うだけで、上手くいかないことが多過ぎて、僕はこんなところではずっと活躍できないと思いこんでいたんですよ。あの時は、それこそ圭太さんもまだ重賞を勝っていなかった。初めて重賞を勝ったのはコウエイソフィア(2005年トゥインクルレディー賞)でしょ。でも、後々はそうやって(重賞も勝って)行くのだろう、という雲の上の存在でしたね。

圭太:そうか、その頃は俺も重賞を勝っていなかったのか。

矢:勝っていなかった。いま僕は33歳だけど、20歳で来ていますから。あの時は仕事もしていなかったから、やさぐれちゃって、本当にいつ辞めても良いと思っていましたから。競馬を乗りたいとも思わなかった。他のジョッキーとも全然つるまないというか、ルームにもほとんどいなかったし、夜遊びに行って、朝起きない。そんな感じです。自分で言うのも何だけど、すごいですよね。昔、1開催(騎乗馬)なしということがありましたよ。なかなかないでしょ?でも、結婚したことがキッカケかもしれない……。

「すごくアッサリと『キッカケ一つだな!』みたいな。でも、それが妙に自分の中で衝撃というか、辛抱強くやっておけば何かあるのかな、みたいに感じましたね」


圭太:結婚はいつなの?

矢:20台半ばですね。森下(淳平)厩舎が開業したから、高橋三郎厩舎から移って、それもキッカケでしたね。自分にプレッシャーを与えて、というか。でも、1回圭太さんに相談したことがあったんですよ。年間20~30勝辺りを2~3年繰り返している時に「ここからもう一段上に行くにはどうしたら良いですか」と。あの時は内田(博幸)さんがいなくなって、その時にリーディングを獲ったか獲らないかの時に聞いたんですけど、すごくアッサリと「キッカケ一つだな!」みたいな。でも、それが妙に自分の中で衝撃というか、辛抱強くやっておけば何かあるのかな、みたいに感じましたね。そんな時に結婚したから、変われたのかもしれないし。

圭太:良いアドバイスだったということだな~(笑)。

矢:ダメな時に何を聞いても心に響かないでしょうね。でも、実際に厩舎を辞めた時に、なにくそというか、見返してやるというのがあったんですよ。結局、競馬に乗れなかったから、誰かのせいばっかりしていたのです。嫌な性格をしているのかもしれないけど、三郎厩舎から騎乗依頼を受けるような人間になろう、という意識はものすごく持っていましたね。

圭太:断ってやるぞ、というくらいの意気込みということだね。

矢:それで何か気付いたら、トントントンと行ったというか、今度は良い馬を乗せてもらえると。雑な仕事も出来なくなるというか、やっぱりもっと自分に厳しくならないと、周りに失礼だし、変わっていけましたね。その頃は一生懸命過ぎてあまり記憶がないです。

圭太:腐らなかったというのがすごく良かったんだろうな。そこでダメになってしまう人もいるだろうから。

戸崎圭太×矢野貴之

▲戸崎騎手のふとしたアドバイスが心に響いたという矢野騎手

矢:いや、腐っていたんですよ。

圭太:腐っていたんだけど、僕のアドバイスでキッカケを掴んで、ここまで来たという感じだからね(ニヤリ)。もともと矢野は移籍してきているし、そんなに深い仲ではなかったんだけど、やっぱり(アドバイスを)聞いてくることがあったので、すごく頑張ってもらいたいとは思っていましたね。僕が成績を出した時でもメールをくれたりして。まあ、余計なメールもあるんだけど(笑)。プライベートの写真をどこかで見つけてきて、わざわざ僕に送ってくるという。そういうやりとりもありましたね。それにしても、リーディングが獲れたというのが良かったんじゃない。

矢:ラッキーですよね。特別な年というか、恵まれていたので。それでも、確かに獲ろうと思っても獲れるものじゃない。最近は本当に思うけど、僕も多少は「持っているな」とも思うんです。というのも、そもそも大井に来るのも僕じゃなかったですからね。高崎競馬場がなくなって「大井から1人取ります」となった時に、僕より後にデビューした子がいたんですよ。その子は入って3カ月で高崎が潰れちゃったんです。デビューして3カ月って、大体みんなデビューしたらパーンと勝ってみたいなイメージが、実際は嫌なことばっかりじゃないですか。「こんなはずじゃなかった。今だったら諦められる」という思いで、その子が諦めたわけですよ。次に獲る候補なら若い子ということで僕になったわけです。その時から「持っているな」、「ラッキーだな、お前」みたいに言われていて。でも、来たものの、それじゃねぇ。

圭太:それ、何が「持っているん」だよ(笑)!?

矢:でも、いま思えば、そういうところが多々ある。最近そう思います(笑)。

圭太:でも、それはすごいね。(冗談っぽく)3カ月の子で良かったのになぁ~。

矢:本当にありがたいです。

何気ない戸崎騎手の発言がターニングポイントに
戸崎圭太×矢野貴之 スペシャル対談(2P)はコチラ⇒

戸崎圭太×矢野貴之

▲今年は重賞2勝を挙げている矢野騎手