香港国際競走を終えて…平松さとしの香港レポート

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12月9日、快晴の香港、沙田競馬場で今年も国際レースが行なわれた。1200メートルの香港スプリント、1600メートルの香港マイル、2000メートルの香港カップ2400メートルの香港ヴァーズ。このうち、香港カップを除く3つのレースに、日本馬5頭が挑んだ。

先陣を切って現れたのは、香港ヴァーズに出走するジャガーメイル(牡8、美浦・堀宣行厩舎)。まったくの人気薄だった同馬だが、直線では先頭で叩き合う競馬。結果、短頭差で敗れたものの、2着を確保してみせた。

「調教師からはとくに何も指示がなかったので、馬のリズムで走らせた。良い競馬はできたと思うが残念」

騎乗したD・ホワイトはさばさばとした表情でそう言った。

続いて行なわれたのが香港スプリント。ここに出走したカレンチャン(牝5歳)とロードカナロア(牡4歳)はいずれも栗東・安田隆行厩舎の管理馬。

「ロードの状態は絶好調。カレンチャンも決して悪くはない状態」と語るのは現地で調教をつけた調教助手の安田翔伍。実際、その言葉通りの結果となった。

カレンチャンはスタートで横の馬にぶつけられ、苦しい競馬になってしまった。これに対し、ロードカナロアは終始外を回りながらも直線、堂々と抜け出す強い競馬。手綱をとった岩田康誠は「ウォッー!」と雄叫びをあげた後、興奮した面持ちのまま、口を開いた。

「勝てると思っていたし、勝つつもりで乗った。この馬で通用しなければ日本のスプリンターはダメだと思った。強いカナロアをおみせすることが出来てよかったです」

最後に登場したのは香港マイルに出走した2頭。すなわちグランプリボス(牡4、栗東・矢作芳人厩舎)とサダムパテック(牡4、栗東・西園正都厩舎)だ。

スタートでぶつけられるような感じとなったサダムパテックが後方から進める中、グランプリボスは二の足で前へ。しかし、最後はじりじりと差を詰めたサダムパテックに対し、グランプリボスは早々に手応えがあやしくなり、後方へ退いた。結果、サダムパテックは6着、グランプリボスは12着と大敗を喫した。

5頭が出走した今年の香港国際レースで、優勝したのはただ1頭。しかし、競馬は負けるのが当たり前であり、まして海外遠征となればその壁はさらに高くなるもの。それを乗り越えての勝利は、たとえ1つであっても立派なもの。実際、過去には何頭もの日本馬が全て返り討ちを喰らうシーンを何度もみてきた。そんな中、日本馬にとって最も厳しいと言われたスプリントというカテゴリーを制したのは価値がある。ロードカナロアは、間違いなく、歴史に名を刻む名スプリンターへと昇華したのである。

(文中敬称略)


平松さとし
ターフライター。1965年2月生まれ。
昭和63年に競馬専門紙「ケイシュウNEWS」に就職。その後、2紙経た後、フリーランスに。現在は雑誌や新聞の他にテレビの台本書きや出演、各種イベントの演出などを行う。