凱旋門賞の出走馬診断[和田栄司コラム]

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アンドレ・ファーブル厩舎の仏ダービー馬アンテロが21日のロンシャン競馬場で行なわれた2000mのG3プリンスドランジュ賞に出走した。1.4倍の圧倒的1番人気に推され、6頭立ての5番手を追走、坂上の半ばで3番手に上がると、直線に入って先頭に立った仏ダービー2着馬モランディを200m残して捕え、スープル(重)表示の馬場、タイム2分12秒23で勝ち上がった。

アンテロのオーナーであるヴェルトハイマー兄弟のレーシングマネージャーを務めるピエール・イヴ・ビューロー氏は「とても楽な勝ち方で我々が望んでいたプレップになった。綺麗な勝ち方でドラマはなかったが、私がオーナーなら凱旋門賞に戻って来ることになるでしょう」と語った。アンテロのスタミナについて心配していたアンドレ・ファーブル調教師も月曜日に凱旋門賞挑戦を決めた。

持ち駒の多いファーブル厩舎は4頭の3歳馬の出走が有力。アンテロの他にもパリ大賞典を勝ったフリントシャー、G2馬ながら英ダービー5着、パリ大賞典3着のオコヴァンゴ、2頭は前哨戦のG2ニエル賞を使い、オコヴァンゴ3着、フリントシャー4着だった。この他、19日サンクルー競馬場で行なわれた準重賞テュレンヌ賞を勝ったゴドルフィンのペンライパヴィリオン、この4頭で史上最多の凱旋門賞8勝目を狙う。

2007年のディラントーマスに続く2頭目の凱旋門賞馬を目指し、愛バリードイルのエイダン・オブライエン調教師は現時点で考えられる、ルーラーオブザワールド、リーディングライト、キングズバーンズ、キャメロットの4頭を候補に挙げた。キャメロットについては、馬場が良くならなければ使わないと言っているが、100日以上もレースから遠ざかった馬に好走の例はない。

リーディングライトはセントレジャーを勝って来た3歳馬だが、あくまでも補欠要員として考えている。キングズバーンズはレパーズタウンで行なわれた愛チャンピオンSでしんがりの6着に敗れた。2歳時のG1レーシングポストトロフィーを勝って以来のレースだったが、半ばの下りで膝を強打したらしい。ジョセフが調べようとしたが、その間にレースが終わってしまったと言うことである。

キングズバーンズも凱旋門賞と愛チャンピオンSの二股をかけているので、バリードイルの本命は英ダービー馬ルーラーオブザワールドになる。ニエル賞の惜敗2着は愛ダービー5着以来のレースだったことを考えれば収穫である。そしてそのレースを勝って目下4番人気となった日本ダービー馬キズナ、こちらはダービー以来となった実戦、馬場と仕掛けのタイミング、コースを十分予習出来た強みがある。

目下前売り1番人気のオルフェーヴルは、クリストフ・スミヨン騎手が1番枠からスタートして内の3番手に入れ、課題の真っ直ぐ走る工夫をした。極端なスローペースで最初の1600mが1分41秒68、しかし後半の1000mは59秒79、最後の200mは12秒01と速かった。ただ本番では良い枠を引ける保証もなく、中団の良い位置を取れるかが鍵となりそうだ。

2番人気の3歳牝馬トレヴが1番怖い存在になるだろう。仏オークスをボン(良)表示の馬場2分03秒77、仏ダービーをも凌ぐ驚異のレコードで制し、ヴェルメイユ賞では直線8番手まで下がりながら最後は推定11秒台の脚で弾けて4戦4勝。鞍上が5ヶ月の騎乗停止から復帰したフランキー・デットーリ騎手と揃った。加えて古馬59.5キロ、3歳56キロ、牝馬1.5キロ減、古馬とは5キロの斤量差も魅力である。

3番人気のノヴェリストは、キングジョージ6世&クイーンエリザベスSを勝ち、バーデン大賞を勝って臨む。G1・4勝、晴雨に関係なく安定感なら今季4戦4勝が全てを物語る。シーズン前半の立役者アルカズィームは、来シーズンから女王陛下のロイヤルスタッドで供養されることが決まった。愛ダービー馬トレーディングレザーと共にどちらが馬群を引っ張って行くかも注目したい。

愛チャンピオンSを勝ってG1・3勝馬となった4歳牝馬ザフューグの追い込み、G2ドーヴィル大賞典でヴェリーナイスネームやシリュスデゼーグルの古馬を破り、ペンライパヴィリオンをアタマ差下した3歳馬トレブルーなど、今年は一騒動あった昨年とは違い有力馬は故障したセントニコラスアビーを除いて順調に勝ち進んで来た思いがする。凱旋門賞まであと10日余りである。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。