凱旋門賞はトレヴが圧勝[和田栄司コラム]

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気温19度、くもり空の中、ウイークエンドロンシャン土日の馬場はスープル(重)表示のまま行なわれた。最終登録でザフューグが馬場を嫌って回避、水曜日ノッティンガム競馬場でフランキー・デットーリ騎手が足首を骨折する。このためトレヴの騎手はティエリ・ジャルネ騎手に替わり、直前ノヴリストが熱発で出走を取り消す。このためオルフェーヴルの単勝は2.3倍で断然の1番人気、トレヴは5.8倍、キズナが7.5倍で続いた。

オルフェーヴルは8番枠からの発走、有力馬はそれより外の枠を引いた。アルカズィームの大外18番枠は、全くついていないの一言で持ち味が生かせないのは気の毒だった。最初は10番枠のペンライパヴィリンが前を伺う。それから14番枠のジョシュアツリーが最終的に先行した。13番枠から出たオコヴァンゴが2番手に上がり、ペンライパヴィリオンは理想通り内3番手を取る。

オルフェーヴルは中団の10番手、しかし内にミオンドレ、前にルーラーオブザワールドがいる。15番枠のトレヴは中団の後ろ13番手の外、11番枠のキズナは後方15番手の外、期せずしてトレヴをマークする形となった。プチボワから続く10mの坂を登り、トップオブザヒルから続く下りを通ってフォルスストリートに入って来た。1400mのラップは1分31秒53、馬場も悪いがペースメーカーのいない競馬、やはりスローである。

その中から次元の違う競馬をしたのがトレヴだった。フォルスストリートから上がって行き直線の入口で3番手、キズナも付いて行き、併せてオルフェーヴルも仕掛けた。直線残り400m、早くもトレヴがジョシュアツリーを交わして抜け出しを計る。その後ろにオルフェーヴルを挟んで、内アンテロ、外キズナ、最終的にアンテロとオルフェーヴル、2頭が残り300mで2番手に上がったが、前を行くトレヴとの差は逆に広がった。

優勝トレヴ、勝ちタイム2分32秒04、トレヴの上り、400mは22秒92、ラスト200mは11秒88、レースの上り600mが34秒34、この馬場でこの脚を使われたらどうすることも出来なかった。因みに1000mのG1アベイユドロンシャン(デクラン・マクドノー騎乗のマーレクが優勝)の400mは23秒92、1400mのG1ラフォレ賞(ティエリ・ジャルネ騎乗のムーンライトクラウドが最後方から怒涛の追い込みで優勝)の400mは23秒79、とても2400mの上りではなかった。

結果的には前の良いポジションを取った馬、また外を追走していた馬に良い結果となったが、これまでとは逆に内ラチ沿いの馬は蓋をされた状態で身動きすら出来なかった。その点では、馬群に包まれた展開の中から、最後は残り350mで諦め2着争いに集中したとは言え、オルフェーヴルは1番人気に恥じない競馬をしたと思う。アンテロとの2番手争いでは、残り150mでアドバンテージを取って死守した。

ティエリ・ジャルネ騎手は、1992年のスボーティカ、1994年のカーネギーに続く凱旋門賞3度目の優勝。ジャルネ騎手は「当時はアンドレ・ファーブル厩舎の為に乗っていたし、時代も今とはまるで違う。まだ効果的な騎乗が出来ることに喜びを感じます」と話し、「彼女は6つのギアを持っていることは知っていたが、今日は7つ目を見せてくれた」と驚いていた。

5戦無敗のトレヴは、カタールの王子シェイク・ジョアン・ビン・アール・サーニ殿下が仏オークスを勝った後にトレードした。1979年のスリートロイカスで女性初のトレーナーとして凱旋門賞調教師に名前を連ねたクリスティアーヌ・ヘッド調教師、勝馬は父アレックから引き継いだ。アレック・ヘッドは、1976年イヴァンジカ、1981年ゴールドリヴァー、2頭の牝馬で凱旋門賞を勝った。しかし、2頭の牝馬よりもトレヴの方が上だとはっきり言った。

女性調教師は「私はパパとシェイクを誇りに思います。トレードした後でシェイクは、凱旋門賞を勝ちたいと言った。私はお約束出来ませんが最善を尽くします、と応えましたが実現出来て光栄です」と語り、「私はフランキー・デットーリ騎手に感謝したい。ヴェルメイユ賞でびっくりするようなレースをして彼女をここに導いてくれた。フランキー、ありがとう。彼が今日ここにいないのが残念です」と続けた。

調教師はオーナーに話すつもりでいる。来年も調教を続け、凱旋門賞連覇を目指して準備に入る。この後は休みを与えるが、仮に1つレースを使うとすれば、それは香港になる。ブリーダーズカップは時間的な余裕が無く、日本(JC)の馬場はいつも堅い馬場で行なわれているので彼女には向いてない、理由からである。またレーシングポスト紙は、サンデーレーシングの吉田代表のコメントとして、オルフェーヴルの次走が有馬記念になると伝えている。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。