3冠目だけは譲れない。レッドディザイアが制す!/平林雅芳の目

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日曜京都11R秋華賞(G1)芝2000m
勝ちタイム1.58.2

勝ち馬:レッドディザイア(牝3、栗東・松永幹厩舎)

3冠目だけは譲れない。レッドディザイアが制す!

中団の内目でじっと我慢のレッドディザイアだったが、直線ではいち早く馬群を抜け出す。
その直後をブエナビスタも追走、直線で狭いところを出てきて追いすがるがハナ差届かず2着。
しかし、長~い審議の末に4コーナーでブロードストリートの進路を妨害したと降着で3着。
京都競馬場の大勢のファンからどよめきの声がこだました。

検量室前の枠場に戻ってくる戦いを終えた馬がひしめく。
そんな喧騒の中で『勝っていたわ~』と声がする。藤田Jの第一声が大きく耳に入ってくる。
5着のミクロコスモスが入った枠場の傍へ行くと武豊Jが『直線でちょっと行き場がなくなって差し遅れました。3着あったと思います』と角居師に報告している。
審議の放送に我を取り戻して、通路に設けてあるパトロールビデオのところへと急ぐ。

肉眼と双眼鏡でライブでは見ていたが、パトロールビデオでジックリと観るといろんな事が見えてくる。
ゲート、ミクロコスモスはあまりいい出でない。じわっとした感じだ。
一番後ろかと思うと、真ん中あたりでブロードストリートが上に飛び上がって出ている。これも大きなハンデだ。
1周目のゴール板あたりで注目のブエナビスタは、と観ると内目の後方だ。
その少し前のやはり内目にレッドディザイアが居る。枠順的に当然にこうなる。
どこで出すのか出さないのかがポイントだろうと思う。
前はヴィーヴァヴォドカワイドサファイヤが一番前の位置で、その少し後ろにクーデグレイスが続く。
けっこう縦長の隊列だ。

向う正面に入って行く。ミクロコスモスは一番後ろから1頭、番手をあげたがまだまだ後ろだが内々を進んでいる。
3コーナーを廻る。レッドディザイアブエナビスタブロードストリート。そしてミクロコスモス
ほぼ縦一列の内ラチ沿いに並んで進んでいる。
どうやら外へ出す腹づもりはどの馬にもなさそうである。

先頭グループの3頭と後続との差がぐっと縮まる。4コーナーに入っていく。
レッドディザイアはもう前の絶好位となって先を目指して進んでいる。
その後ろにいたブエナビスタが少し外目に動いた。
その瞬間、その左後ろに位置していたブロードストリートが、手綱を持ち上げて馬を制御する動きとなってしまう。
ちらっと安藤勝Jが後ろを振り返ってもいた。そして直線に入ってくる。
馬体を立て直したブロードストリートだが、その進む先にまたブエナビスタが内から出てくる。
今度は内へ進路を切り返したブロードストリート
その後ろで前をうかがっていたミクロコスモスの前に、ブロードストリートが入ってきている。
ここでもアクシデントが発生している。
ミクロコスモスにもロスタイムが発生して仕掛け遅れとなってしまった。
後ろでイロイロな動きが発生していたその先では、早めに馬の中をすり抜けたレッドディザイアが栄光のゴールへと進めている。
追い上げたブエナビスタが猛然と脚を使って一完歩ずつ迫るが、届いていないのがハッキリ判った。

何度も何度もパトロールビデオを観る。
いつもの事だがどうジャッジが出るのかは我々には判らない。
アウトかも知れないしセーフなのかも知れぬ。
ただレッドディザイアの勝利は間違いない筈。
検量室前はレッドディザイアの関係者の歓喜のうずと、静かに判定を待っている人々でゴッタ返している。
パトロールビデオを見て感じる事は、ブロードストリートは二度の不利。
ワンカラットミクロコスモスも不利は蒙っている。
一番大きいのがブロードストリートが受けたもので、鞍上が言うように勝っていたかも知れない。
でもミクロコスモスの不利は誰に申し上げたらいいのだろう・・。

レッドディザイアは14キロ減の馬体だが細くは見えない。
パドックでブエナビスタミクロコスモスレッドディザイアと順に周回していたが、3頭ともいい雰囲気で大観衆に動じない歩きだった。
ブエナビスタに至っては、輪の外側でシャッターチャンスを狙うカメラマンに顔を向けて歩くぐらいの余裕。
堂々たる仕草はいつもながらだ。
ただこんな結末になるとは非常に残念である。
一方レッドディザイアは自分の力を出し切ったもので栄冠を自力で獲りに行ったもの。
お見事と言っていい勝利だろう。
松永幹師におめでとうと言いたい。
そしてブエナビスタ、あそこは勝負処であろうし出て行くポイントだろう。
だからこそあの動きを発生した筈。
桜花賞、オークス、そして今回とレッドディザイアブエナビスタの2頭が織り成したドラマ。
最後の秋華賞はちょっと悲しい結果となったが3冠は難しいと思わせるもの。
春そして夏を越して秋、と短くもあり長~い3つのレース。
今年の3冠の戦いは終ったが、これからまだまだライバル対決はある筈。
面白い競馬をまた次の機会に見せて貰おう。