イコピコの素顔が分かる:桜井厩務員独占インタビュー

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イコピコの素顔が分かる:桜井厩務員独占インタビュー


-:桜井さん、よろしくお願いします。まずは、桜井さんが西園厩舎に入ったのはいつだったのか教えていただけますか?

桜:今年の5月1日です。

-:競馬学校を卒業して、すぐに厩舎に入ったんですか?

桜:いえ、僕は宇治田原優駿ステーブルにいました。競馬学校を卒業してから半年間、宇治田原で待機していたんです。そうしたら西園厩舎で欠員が出ることになって、縁あって入らせてもらいました。

-:5月1日に厩舎へ入ってから、ずっとイコピコを担当されているんですか?

桜:そうです。担当させてもらったのが、イコピコとミルフィアタッチという馬ですけど、ミルフィアタッチは6月に未勝利を勝ってくれました。

-:馬運いいですね。ところで、5月1日に入ったという事は、ほぼ1週間後にプリンシパルステークスがあったっていう事ですよね。

桜:そうですね。東京に行きました。

-:イコピコは4着でしたが、もし2着で権利を取ったら、トレセンに入っていきなりダービー出走という事になっていたわけですね。

桜:ハイ。初心者専用のオレンジと白に染め分けられたヘルメットを被って(笑)。

-:快挙までもう一歩でしたね(笑)。桜井さんにとっての初勝ちはどのレースになるんですか?

桜:イコピコの白百合ステークスです。

-:入ってほぼ1ヶ月でいきなり初勝ち。しかもオープンですか。

桜:そうですね(笑)。6月はさっき言ったように、ミルフィアタッチが未勝利戦を勝ちあがってくれて。

-:そして9月にはイコピコが神戸新聞杯、と。入ってすぐに、これだけポンポンと結果が出るなんてなかなか無いですよね。周りの方たちから何か言われました?

桜:そりゃもう、いろいろとイジられましたよ(笑)。近所の厩舎の、紫色のジャンパーを着ている方を中心に、いろんな人にイジられました。

-:その、初勝利と初重賞勝ちをプレゼントしてくれたイコピコの、レースの時と普段の違いがありましたら教えてください。

桜:うーん、普段もレースもそうなんですけど、のんびりしているんですよ。坂路に行く途中も、ノソノソ歩いて「もっと早く歩かんか」っていうくらいなんですけど、坂路のスタート口に来ると、一気に切り替わるという感じです。

-:そうなんですか。

桜:でも切り替わるといっても、ガッツンという感じで変わるんじゃなくて、適度な良いハミがかりで。それで調教が終わったらまたのんびり戻って、とオンオフの区別が付く馬です。競馬に行っても、装鞍所では大人しくて、装鞍したくらいからキビキビとしてくるんです。パドックでもカッカする事なく、イレ込み過ぎず、ちょうど厩務員が引きやすいくらいの感じです(笑)。多分、無駄な力は使わないんでしょうね。

-:頭が良いんですかね。

桜:頭良いと思いますよ。手がかからないから、人間にとっては一番ありがたいですよね。ウルさくもないし。だから逆に、強烈なインパクトっていうのは無いかもしれませんね。ホンマに扱いやすいですから。可愛らしい子です。

-:優等生なんですね。

桜:優等生ですね。人間に従順ですから。ちょっと怖がりなところもあるんですけど。

-:そうなんですか。

桜:運動している時に、物音に驚いたりしますよ。でも競馬に行くと、周りの馬を怖がる事もないです。

-:なるほど。これだけ結果を残しているのは凄いですよね。ちなみに神戸新聞杯はどこで見ていましたか?

桜:ゲートに行っていたんで、厩務員さんたちが乗って移動するバスの中のテレビで観ました。最後の直線では、周りの空気も読まずに大声で叫んでいました(笑)。夢中になって、頭真っ白になっちゃって。

-:ウイナーズサークルでの口取り写真はどうでした?

桜:何か、勝った瞬間から周りが静まりかえって「イコピコって誰やねん?」みたいな空気になっていたんですけど、あれはちょっと気持ち良かったです(笑)。

-:気持ち良かった、ですか(笑)。でも神戸新聞杯では「誰やねん?」だったイコピコが、菊花賞では有力馬の一頭として出走するわけですけど、桜井さんの心境に変化はありますか?

桜:いえ。普段と変わらないようにしたいですね。まあ、今、もう既に緊張していますけど。でも、神戸新聞杯の前も、十分緊張していたので。

-:あ、神戸新聞杯の時も緊張されていたんですね。世間的にはまだ注目度が低くても、イケるという手応えがあったんですか?

:はい。あの時は追い切りに乗っていた(酒井)学さんがエラく絶賛して「ホンマ、これ一発あるぞ」って言ってくれていたので。

-:イケるかも、という緊張は経験済みで。

桜:でも慣れるものじゃないですからね(笑)。というか、慣れるほど働いていないですから。

-:5月に入ったんですもんね(笑)。

桜:はい。もう楽しませてもらおうと思っています。こんなプレッシャーを味わえるのもありがたい話ですから。とか言いながら、夜寝れへんのですけど(笑)。

-:そうなんですか(笑)。

桜:明日、朝早いのに寝付けへんぞ、と(笑)。夜9時くらいに寝床に入っても11時くらいまで寝れなかったりしますから。夢にもイコピコが出てきますよ。

-:夢にまで出ますか。

桜:はい。夢ではいつでも1着なんです(笑)。

-:いいですね(笑)。

桜:まあ、実際に走るのは馬なんで、人間が固くなっても仕方ないんですけどね。何とかこの緊張を馬に伝えないようにしています。

-:そうですか。で、菊花賞の当日なんですが、桜井さんは何時頃に起きるんですか?

桜:2時です。

-:深夜ですね。

桜:2時に起きて、1頭調教に乗ってからイコピコと一緒に馬運車で京都競馬場へ行きます。

-:何時頃、京都競馬場に到着するんですか?

桜:7時半くらいには着くと思います。それで、競馬場の厩舎に行って、ちょうど良い時間にカイバを食べさせます。勝負カイバですね。

-:勝負カイバの中身は決まっているんですか?

桜:いや、担当者によって違います。この社会、マニュアルや正解って無いですからね。

-:いつ、何を食べさせるのかというのは担当者の判断なんですね。

桜:ウチの厩舎ではそうです。勝負カイバだけでは無くて、日々のカイバも自分で考えてあげています。やっぱり、厩務員ですからね。

-:なるほど。では、最後にイコピコファンに向けてメッセージをお願いします。ちなみにこういう、ファンに向かってメッセージって話した事はありますか?

桜:無いですよ(笑)。その前に僕がイコピコのファンですもん。応援してくださっている皆さんと同じ気持ちです。あとイコピコに対しては、まず無事に帰って来てください、と。

-:無事に帰るって重要なことですよね。そんなイコピコは今、目の前で一心不乱にカイバを食べていますけど。

桜:春先は残すこともありましたけど、今はあげたらあげただけ食べるんじゃないか、という勢いです。

-:その元気で菊花賞も良い結果出るといいですね。応援しています。今日はありがとうございました。

桜:ありがとうございました。


イコピコ
(牡3、栗東・西園厩舎)
父:マンハッタンカフェ
母:ガンダーラプソディ
母父:ジェイドロバリー
近親:シャドウゲイト
通算成績:8戦4勝
重賞勝利:09年神戸新聞杯(G2)