ノーステッキで最後は流すほど ダンスディレクター強し!!

ダンスディレクター

16年1月31日(日)2回京都2日目11R 第21回シルクロードS(G3)(芝1200m)

ダンスディレクター
(牡6、栗東・笹田厩舎)
父:アルデバラン2
母:マザーリーフ
母父:サンデーサイレンス

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馬場が乾いてきたとはいえ、稍重。スピード決着にはならないだろうとの見込みを、ローレルベローチェが見事に崩してくれる。前半3Fが33.7と単騎逃げだが飛ばす、飛ばす。4角手前では5馬身ぐらいの差で2番手が離れた。このまま逃げ切りかと思えたのだが、さすがにそうは行かぬ。2番手のセカンドテーブルが直線半ばで外へと開いた瞬間、その後ろにいたダンスディレクターがスッと進路を取って真っすぐ伸び、前を行くローレルベローチェを追ってあっという間に追い抜く。チラっと左後ろを見る浜中J。その後もステッキは入らずで、ゴールに入る瞬間には頭を振り『信じられない!』とばかり凄い伸びに、感嘆のポーズまで見せてくれた。ダンスディレクターの楽勝のピリオドだった…。

1番人気のビッグアーサーは、やはり外枠では壁を造るのが難しいのか道中でやや掛かる格好を見せていた。外から外へと脚も溜まらず、直線の弾けがいつもほど見られなかった。パドックですこぶる良く見えたのがネロ。ほど良い気合で絶好のポジションで競馬が出来るだけに、直線では先に抜け出すシーンまで目に浮かぶ程。だが現実は甘くない。そんなシーンは一度も見られず。むしろ直線半ばで早々と脚が残っていなかった。9着敗退だ。
ゲートが開いた瞬間に、サトノルパンヒルノデイバローが馬群から取り残される。ヒルノデイバローは馬場入りしての返し馬のゴール前で躓いていたのを見て《やはり芝はダメなのかも…》と、大穴ならこの馬と思っていた気持ちが急激に冷めて行った。道中もドンジリで鋭角に外へ出してきて追い込んではきたがこの内々、前々の決着では惜しいまでもいかなかった。


もう一度ゲートから振り返ろう。開いた瞬間にサトノルパンとヒルノデイバローが置かれた。場内アナウンスが『サトノルパン、出遅れました』と告げる。ハナはアクティブミノルかと思う程にいい出が出来たが、すぐに内からローレルベローチェがダッシュを利かせて前に出ていく。内からセカンドテーブルも3番手に押し上げる。今日は五分に出れたダンスディレクターだったが、それでもまだ前にはけっこういた。それがすぐ前の芦毛の馬、リトルゲルダが外へと流れてくれる。労せずにラチ沿いの前から3番手となったダンスディレクター。ここが大きな第一のポイントだったはず。外からネロが押し上げて来て4番手に付くが、内と外の差はかなりある。出遅れから馬群の中を押し上げてきたサトノルパンが6、7番手にいる。ビッグアーサーはその後ろの外目でM.デムーロJの脚が突っ張っている。かなり掛かり気味になっているのだろうか。

3角を廻っていく。単騎逃げとなったローレルベローチェがどんどんと逃げる。2番手のセカンドテーブル、アクティブミノルには4馬身ぐらいの差をつけている。最後方には2、3馬身離れた位置にヒルノデイバローだ。1頭が飛ばしているが、追走する2番手グループの手応えからもそう速くは見えない。3F33.7と後で知る。
4角手前ではさらに差が開いたローレルベローチェの逃げ。ネロが4番手から3番手をうかがう感じで上がってきてカーブを廻る。ビッグアーサーは馬群の真ん中あたり。かなり縦長でのそれであり、前からはかなり離れている。

1000mを56.2で飛ばしたローレルベローチェだが、直線に入っても止まらない。2番手のセカンドテーブルが追い出しているのに、まだ手綱は動かず。そのセカンドテーブルの内からダンスディレクターが伸び始める。前を行くローレルベローチェがステッキを入れだしたラスト200mを切ったあたりで、すぐ真後ろまで迫るダンスディレクター。あっという間に抜いてゴールを目指して行った…。


馬場が乾いてきた事もあろうが、やはり内枠が有利なのは歴然。その利を生かした先行馬グループであり、外々を廻った馬の出番はなかった。前半が33.7で上がりが34.2。前を抜くには、それ相当なる脚を使わないと無理。ローレルベローチェも34.4の脚で逃げ粘っているのであるが、ダンスディレクターが33.3の脚を、それも経済コースを通って貯めに貯めた分での末脚には適わなかったが、立派な内容であった。サトノルパンは57.5キロの斤量もあろうし、スタートでの致命傷もあったか。ワキノヒビキが最後にいい脚を使って3着。時として走る馬である。

ダンスディレクターはこれで16戦6勝。その15戦で手綱を取る浜中Jとのコンビで、重賞チャレンジ4戦目での初勝利となった。むしろ1200芝は適性が高いのを原稿を書きながら調べていて知った次第。もっと勉強せねばならぬ。
5戦して連を外していない。2勝2着3回であり、CBC賞でウリウリに負けた時は通ったコースの差だけの負けでもあった。五分にスタートを出たらこれだけ強いのである。これで大目標である高松宮記念で最大の穴馬、いやきっと人気の一角になる馬であろう。
ビッグアーサーはアクシデントがあった中間の様だが、今までにないぐらいの負け方であった。そしてネロも案外な競馬内容でガッカリ。これから東の強い馬達が出てきたら劣勢の関西短距離路線の様な気がしてきたが、ダンスディレクターという新星に頑張って貰わねばなるまい…。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。