父、弘次郎元調教師から厩舎を引き継ぎ、お馴染みのラインナップで大舞台を賑わせている橋口慎介厩舎。この安田記念にはクラレントとレッドアリオンの兄弟を送り込み、虎視眈々と一族初のG1制覇を目論んでいる。どちらも古豪と呼べるキャリアの持ち主だが、転厩のタイミングでしっかりとスパイスを加えている様子。変革の秘策を聞かせてもらった。

臨戦過程は昨年以上のクラレント

-:安田記念(G1)に2頭を出走させるということですが、まずクラレント(牡7、栗東・橋口慎厩舎)について伺います。7歳を迎えましたが、2歳から長期休養もなくタフに走り続けていますよね。

橋口慎介調教師:そうですね。本当にタフな馬ですね。

-:ちょっと調子を崩した時期もありましたが、前走のマイラーズCも3着でした。前走のデキはどのような感じでしたか?

橋:ダービー卿CTを叩いて、だいぶ状態はアップしていましたね。

-:7歳にして進化、ではないですが、強くなっているという感じで。

橋:厩舎も変わって、運動量も増えたし、調教の内容もちょっと変化を付けて、飼い葉の内容なども色々やっています。その辺りが影響しているのではないですかね。

橋口慎介

▲父・橋口弘次郎元調教師から引き継いだ管理馬でG1挑戦となる橋口慎介師


-:以前、伺った時に、今まではほぼ坂路追いだったのを、コースも取り入れるようにした、とおっしゃっていましたものね。

橋:この馬に関しては坂路が多いのですが、それでも角馬場での運動を取り入れてみたり、運動量自体は増えたと思います。

-:そうしますと、馬体面でも変わってきたりとかするものですか?

橋:馬体も前よりたくましくなったというか、7歳にしては珍しいですね。この馬に関しては、本当に良くなってきています。

-:昨年の安田記念は3着でしたが、今年も上位争いができそうですね。

橋:昨年はマイラーズCで10着からの参戦だったので、今年はそのマイラーズCで3着に来ましたし、去年より臨戦過程は良いですよね。

-:前走は右回りでしたが、勝利している重賞も左回りが多いし、どちらかと言うと左回りが良いですよね。

橋:「どちらかと言うと」ではなくて左回りの方が完全に良いですね(笑)。コース替わりは間違いなくプラスですし、ベストの舞台だと思います。

-:なるほど。本番でどんなレース運びをして欲しい、というのはありますか?

橋:ジョッキーもわかっていると思うので、特に指示をしたりすることはないですが、多分前々からの競馬にはなるとは思います。

-:先行する場合、ハナを切っていくような感じは避けたいですか?

橋:いや、天皇賞(秋)の時なんかは逃げて良い競馬していますから、逃げるのがダメということは無いと思いますよ。誰も行かなければ逃げても良いですし、そこはレースの流れによりますね。

橋口慎介

▲小牧太騎手を背に一週前追い切りを行うクラレント


馬具を工夫して臨むレッドアリオン

-:もう1頭、レッドアリオン(牡6、栗東・橋口慎厩舎)ですね。当時、先生はまだ管理されていなかったと思うのですが、昨年の関屋記念を逃げ切っていますよね。ここ最近は着順がイマイチ冴えないですが、それはどの辺りに原因があるとお考えですか?

橋:やっぱり気の悪いところがあって、ちょっとでも外から被せられたり、馬込みで揉まれたりするとやめてしまうところがあるんですよね。

-:関屋記念では逃げ切っていますが、その次のマイルCSでは後方からの競馬になったり、というチグハグなレースが続いていますが、この馬にとってはどのようなスタイルが一番良いのでしょうか?

橋:色々な乗り方で結果も出ていますしね、3歳のNHKマイルの時なんかは出遅れて僅差の4着まで来ていますから、どんな競馬でもいいとは思っているですが。とにかく揉まれない競馬なら位置取りはそこまで気にしなくて良いのかと。今度の競馬はその辺りを意識してもらって乗って欲しいですね。枠次第な面もありますが。

-:そうしますと、枠は内より外目が欲しい、という感じですか?

橋:今までの結果を見ても、外枠の方が結果も出ていますし、外のほうがいいですかね。

-:調子自体はどうでしょうか?

橋:調子の方は、こないだ一回叩いてすごく良くなっていますよ。今日の追い切りなんかもクラレントより良かったです。マイラーズCの時はクラレントのほうが動いたんですよね。あの時はまだアリオンは休み明けだったのもあったので、体に余裕もあったし、その差が出たとは思うんです。今回は体も絞れてきましたし、アリオンのほうが動きましたね。

橋口慎介

併せ馬を行うレッドアリオン(左)とクラレント


-:兄のクラレントも昨年は大敗からの巻き返しでしたからね。その点を考えてもこの馬も好勝負があってもいいですよね。

橋:この馬も良くなってきているんですよね、あと、この中間に集中力を持続させるために道具などを試してみました。

-:具体的にどんなものを試したのですか?

橋:色々やってみたのですが、一番ハマりが良かったのがクロス鼻革とリングバミの組み合わせですね。それからすごくいい感じなのでこれからもそれでいこうと思っています。

-:今まではノーマルバミで、鼻革も特にしていなかったんですね。

橋:そうですね、ノーマルで乗っていました。

-:リングバミってやっぱり効きますか?トライアビットというのもあるとは思うのですが?

橋:効く馬にはやっぱり良く効きますよね。トライアビットはあれも効く馬と効かない馬の差があって、効く馬にはすごく効くんです。でも、逆に引っ掛かる馬もいて、棒バミみたいなものですから、カツって当たるとそれがきっかけで掛かってしまう馬もいますね。


「リングバミはこの馬には合っていたので、それでいこうと思っています。一回、15-15を行く日にブリンカーも付けてみたりしたのですが、力んで走ってしまって、制御不能になってしまって口も効かなかったですし、それはちょっとやめてみようと」


-:確かに、あれ以上の制御力のあるハミってないですものね。あれで口が壊れてしまうと直せなくなってしまいますよね。

橋:その点、リングバミはこの馬には合っていたので、それでいこうと思っています。一回、15-15を行く日にブリンカーも付けてみたりしたのですが、力んで走ってしまって、制御不能になってしまって口も効かなかったですし、それはちょっとやめてみようと。

-:道具ってやはり、いいところと悪いところが紙一重ですね。さて、ライバル関係です、モーリスが登録していて、おそらく最大の強敵になると思いますが、他にもリアルスティールなどもいますよね。

橋:モーリスは強いですよね。実力は抜けていると思います。ただウチの2頭も仕上りは本当に良くなってきているので、何とか一泡吹かせたいですね。

-:この兄弟は本当に優秀で、長兄のリディルもそうでしたが、一族で多くの重賞を勝ってきていますが、いまだG1は未勝利。血統的にも何とかG1を勝たせてあげたいところですよね。そういった面も含め、最後に今回の安田記念に向けて、先生の意気込みを聞かせてもらえますか?

橋:モーリスが出てきたら、最大のライバルになるとは思います。他にもリアルスティールなどもいて、強敵が揃うとは思いますが、一矢報いたい気持ちですよね。重ねて言うようですが、本当にデキが良いので、何とか一泡吹かせられるように調整していきたいと思います。


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