2017年はデビューイヤーの昨年を既に上回る勝ち星を重ね、日増しに注目度を集めている荻野極騎手。エージェント制度隆盛の現在において、自らの力で騎乗馬の管理をし、成績を向上させたヤングジョッキーは日々何を考え、何を肥やしとして、飛躍を遂げられたのか。競馬に対する飽くなき探究心にロングインタビューで迫った。

騎乗馬管理はタブレットで エージェント知らずの2年目

-:2年目の今年、急成長を遂げている大注目の荻野極(おぎの・きわむ)騎手に伺います。よろしくお願いします。突然、(清水久詞)厩舎を訪問させていただきましたが、このタブレットは何ですか?

荻野極騎手:これは自分で騎乗馬を管理するために、タブレットに保存しているんです。

-:エージェント制が当たり前の時代。エージェントを付けずに一年目からやられていることは凄いですね。当面はその形になりそうですか?

極:そうですね。おそらく(清水久詞)先生から動きがあるまでは。僕は先生に「デビュー前からエージェントなしで」と言われて始めたことですし、言われた課題をしっかりやるしかないので、今はこの状態で続けていくべきなのかなと。

-:それを最初に聞いた時はどんな心境でしたか?

極:でも、昔の競馬界はそういうスタイルが基本。デビューしてすぐは自分で進めていくというのが本来の姿だったのかと思います。最近はエージェントを付けるのがそれこそ主流にはなっていますが、清水先生のサポートもあるので、そんなにマイナス面は考えずに臨みました。

荻野極

▲9月には20歳になる荻野極騎手

表情にはあどけなさが残る中でもインタビューにはしっかりとした口調で答えてくれた

-:成績面で見たら、決してマイナス面を感じさせないくらい、充実の2年目なのかと思います。

極:最近は自然と良い馬も声を掛けてもらえるようになったことは実感しています。ただ、そこでもう少ししっかりとした成績を残せたら良いのですが、現状には満足していません。周りのお陰で良い流れが生まれているので、それを崩さないように頑張る時だと思っています。

-:橋口慎介厩舎を筆頭に、所属以外の厩舎からの依頼が増えていることは信頼の証なのかと思います。

極:そうですね。橋口厩舎は特別に相性が良いというか、色々な良い馬を乗せていただいています。そのタイミングでちょっと良い成績を挙げられたというのは本当に大きいことだと思うので、そういった繋がりも大切にして、もっと頑張っていきたいなと思います。

荻野極

▲番組表をタブレットに保存して騎乗馬を整理している荻野騎手

-:先ほどタブレットを整理されていた訳じゃないですか。根本的にそういう話をいただくには電話を自分で受けないといけないし、日頃の厩舎の挨拶周りもあるわけで、簡単ではないですよね。

極:厩舎回りは基本的に毎日することなので、当たり前なのですが、電話は自分が調教に跨っている時にも、もちろん鳴ってくるので、どうしても対応しきれない時はありますよね。ただ、最近は周りの方も僕にエージェントが付いていないということも認知してもらえるようになって、だいぶ円滑に連絡が回るようになっているので、周囲の配慮に感謝していますね。

-:先程はイヤホンを付けて、作業されながら電話もされていましたね。

極:電話も基本すぐに出られるようにしています。電話1本逃しただけで、馬1頭の依頼がなくなってしまう、というリスクがどうしても僕にはあるので、とにかく常に出ないといけないので。けっこう掛かってきますが、そういった環境でやらせてもらっているので、嬉しいですね。

毎日の騎乗こそが荻野極なりの一番のトレーニング方法

-:ここ最近の1週間のスケジュールも教えていただけますか?

極:基本、月曜日が厩舎関係者の全休日でオフなのですが、僕は栗東近郊の牧場に乗りに行っています。火~金曜は競馬がないので、毎朝調教に乗って、それこそ番組の依頼の応答を受けたりしながら厩舎作業をしていますね。もちろん土、日は競馬で連絡が取れないので、直接話をしてメモでやり取りをする感じですね。今のところ、基本的には馬に乗っていない日はないですね。

-:それは素晴らしい。疲れないですか?

極:まだ、体力がないというか、足りていない時は疲労感を感じる時がありましたが、今はだいぶ慣れたので。ただ、まだ若いですし、そんなに体力的に疲れる、疲れると言っていても、もっと体力を付けていかないといけない歳ですから、そんなことは言っていられないですしね。

-:全休日まで乗ってらっしゃるとは存じていなかったので。

極:それこそ、よくお世話になっている馬の携わっている方々の牧場に行ったりして、乗りにいくようにはしていますね。

荻野極

-:騎手になるきっかけ、経緯を教えていただけますか?

極:きっかけは小学生6年生の頃にテレビで競馬を観て、ジョッキーという職業に対して憧れを持ったことです。その頃は特に池添謙一さんがドリームジャーニーで有馬記念を勝たれたレースが印象的でしたね。そこから乗馬クラブに通うようになったのですが、そこが競馬学校の試験の対策を練ってくれるクラブでした。試験に向けて対策を練りながら、競馬学校を受験して、晴れて受かることができました。

-:突然競馬に目覚めたとは、どんな家族構成でしたか?

極:両親と2つ上の兄がいる4人家族ですが、父、母両方とも競馬関係でもありません。むしろ、競馬への興味というか、知識もあんまりなかったので、そういった中で僕がジョッキーになりたいと言い出した時は多少驚いていましたが、比較的僕がしたいことをさせてくれることが多いので、協力的にやってくれたと思います。

-:今や応援に駆けつけたりされているのではないですか?

極:そうですね。仕事の休みや都合が取れた時は、わざわざ関西の競馬場に来てくれたりして応援してくれますけどね。

-:この前、東京に乗りに行った時も?

極:多分、来ていたと思うんですよね。言わずに来たりするので。それは、あんまり硬くさせないためじゃないですかね。

-:良いご両親ですね。

極:はい。見えない配慮というか。

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