元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
リズムが余裕を作る
2018/10/31(水)
皆様、こんにちは!我が巨人軍では大きなニュースが流れました。巨人の元エースでメジャーリーグに挑戦し、戻ってきてくれていた上原浩治投手がとうとう自由契約となってしまいました。無名から登りあげた努力のエースの自由契約は寂しいようでありつつも、他のチームで更に輝いてほしいと思う、複雑な気持ちにおそわれました。しかし、新時代はいつでも何かを残し、何かを捨てながら前に進む必要があります。その代償としての自由契約はプロの世界では仕方ないことですね。
さて、競馬界では東京競馬場で天皇賞(秋)が行われました。キタサンブラックがいなくなり、中距離路線を占う一戦で注目が集まっていましたが、制したのはまたまたまたまたのルメール騎手とダービー馬レイデオロでした。しかし、今年のルメールは全てがいい方に向かっていることで、ダメでも仕方ないから我慢しようという乗り方が全て結果に結びついていますね。勿論、失敗してもいい馬が戻ってくるという自信もあるのでしょうが、今年は本当に止めようがない騎乗をしています。
レース前にダンビュライトが入場で暴れ、担当者を引っ張りあげ踏みつけたりし、その後は戸崎君も粘りに粘りましたが、最後は振り落とされ除外となるアクシデント。騒然とした中でのゲートインとなりました。ゲートがきられると、1番人気に推奨されていたスワーヴリチャードがトモを落とすようなスタートになり半馬身遅れながら出ると、その直後にマカヒキにカットされる形となり、鞍上のミルコは落とされる一歩手前となりました。それをよそ目にレイデオロは早めからポジションを取りに行く中、ハナを奪ったのはキセキと川田君でした。アルアインが続き、さらにレイデオロというポジションとなり、菊花賞馬・皐月賞馬・ダービー馬と豪華な並びになりました。
前半は59秒4と少し早いペースではありましたが、メンバーの力を考えるとほぼ平均ペースといったところだったと思います。そのよどみのない流れの中、1番人気のスワーヴリチャードはゲートでカットされたマカヒキに終始ふたをされる競馬となり、何もできなくなりました。マカヒキはスワーヴを気にしすぎるあまり、自分のレースができていなかったと思います。それが結果として流れ込んだだけのレースになったと思います。その2頭をよそ目に自分の競馬に徹したキセキが粘り込みを図るも、力の違いを見せたレイデオロがスっと交わすと1着でゴールし、2着にはモレイラ騎乗のサングレーザーが入りました。
自分の競馬に徹した3頭が先着し、自分の競馬ができなかった馬が負ける。まさに、そんなレースだったと思います。これでレイデオロはダービー以来のG1勝利となり、古馬中距離戦線でも圧倒的な力を見せていくのだと思います。逆に期待されていたスワーヴリチャードはトモも弱く映り、気持ちが入っていないレースだっただけに、これが放牧ボケとなっているのか全盛期を終了したのか、非常に判断が難しいレースとなってしまいました。次のレースにも断捨離が難しい結果だけに、復活を望むか否かで信じたほうがいいと思います。
さて、G1シリーズは休みになりますが、JPN1のJBCデーが京都競馬場で行われます。それぞれ、一頭ずつ注目を挙げると、まずJBCクラシックはケイティブレイブを選びたいですね。前走でも圧倒的な走り、臨機応変なレースを作れることも強みだと思います。あとは中央の馬場が合うかそこだけだと思います。JBCスプリントはマテラスカイを選びたいです。前走は余裕残しの仕上がりで負けてしまいましたが、今回は勝負懸かった仕上げをしてくるのではないでしょうか。そして、JBCレディスクラシックでは門別での圧勝もあったラビットランに期待したいです。こちらは気性的な面からも不安は多い一方、走る気持ちを出した時は力がありますからね。ダートの祭典JBCをぜひ、京都競馬場で楽しんでください。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。