元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
ルメ、ルメ、ルメール
2020/11/9(月)
皆様、こんにちは!長引くアメリカ大統領選挙の結末が見えてきました。これまでの最多投票数を獲得したバイデン氏が初の当選を確実としてきました。トランプ陣営はこれまでの動き方からも不服としているようですが、投票数の多さからも、チームアメリカとしての意思がバイデン氏に託されたような気がしています。
トランプ氏の支持者には過激派が多いことからも、全ての開票後にも荒れそうな雰囲気のあるアメリカをどうバイデン氏が統率していくのか非常に楽しみにしています。競馬界の選挙といえば宝塚記念や有馬記念のようなファン投票がありますが、全てのG1でも賞金が足らなくても、1枠ファン投票を設けてみるのも面白いのではないかと思ってしまいました。
先週の競馬を振り返りましょう。G1はお休みも、重賞が4つもある週となりました。土曜日には京王杯2歳SにファンタジーS、日曜日にはアルゼンチン共和国杯とみやこSが行われました。リーディング騎手ルメールが止まることない活躍で、両日の重賞制覇となり、まさにノリにのっている週になりました。レースを振り返る前に、ルメールの上手さについて、少し書きたいと思います。
まず、何がすごいかというと、競馬の上手さにあると思います。日本競馬の流れや馬場を把握し、スムーズにスタートからポジションを取ることができ、更に折り合いをつける技術もある。その上、直線に入るまでに馬のバランスをしっかりと取り、走りやすい体制を作ってから無理なく追い出してくるところです。焦ることのないメンタルがあるからこそですね。もちろん、その間に締められてスペースがないということもありますが、大抵の馬は手応えがあれば抜け出せる技術も持っていますからね。
激しく目立つような派手さはないですが、それが彼の素晴らしいところだと思います。リーディング騎手の上位にB型が多いのは技術もしかり、血液型からも見える性格が活かされているのかも知れませんね。それでは、ルメール勝利の中からアルゼンチン共和国杯を振り返りましょう。勝利したのは木村厩舎のオーソリティでした。青葉賞を快勝した後に骨折が判明し、長く休養をしていた馬でしたが、今回プラス12キロと成長した姿で見事な走りを見せてくれました。
折り合いも難しい馬でしたが、ルメールの技術でしっかりと3番手で折り合うと、直線ではどこまでも止まらないような走りで見事に勝ち切りました。メンバーとしては少し手薄でしたが、まずは復帰戦で重賞連勝というのは立派だと思います。まだG1ではどうかな?と思いますが、成長力のあるオルフェーヴル産駒だけに、これからまだまだ伸びていくのではないかとも思っています。
1番人気に推奨されたユーキャンスマイルは58キロの斤量もあり、本来の走りではなかったように見えました。休み明けもありましたし、目の覚めるような末脚に期待していましたが、今回より次に期待というような走りだったと思います。3着に入ったサンアップルトンは、実はすごく興味を持っている一頭です。これくらいの中距離で確実に走ってくる馬だけに、今後も複勝狙いでチェックしながらも、ひとつは重賞を勝つのではないかと追いかけたいと思います。
今週は京都ではなく阪神でエリザベス女王杯が行われます。コース替わりを歓迎する馬と、例年の京都だったらという馬がいると思いますが、いったいどうなるのか非常に楽しみな1戦になりそう。今回は混戦模様のレースになるのではないでしょうか。その中でも鞍上の勢いそのままラッキーライラックとルメールのコンビが1番人気に選ばれるのではないでしょうか。札幌記念では少し残念な競馬になってしまいましたが、上記したじっくりと乗るクリストフとは手も合いそうですからね。
G1馬ノームコアも力は十分ですし、復調途上とはいえラヴズオンリーユーも昨年オークスを勝っていますからね。その他にも、力をつけてきているウラヌスチャームやサラキア、センテリュオなどの上がり馬にも注目しておかなくてはいけません。ハナ争いを制すようならウインマリリンからも目が離せませんよ。新の女王を決定するレースは今週阪神で!皆様お愉しみください!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。