元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
見せつけられた世界レベル
2022/12/2(金)
皆様、こんにちは!ワールドカップが盛り上がってますね。日本は残念ながら第2戦のコスタリカ戦に敗れてしまいました(※更新直前でスペインに歴史的勝利!決勝トーナメント進出決定)。必死に戦った選手に対して手のひらを返したような対応があったと聞いた時はショックを受けました。吉田選手にもあの判断は結果として正しくなかったとなりましたが、少しでもマイボールの時間を制御するためにはと思った対応だったと思います。いくらいい守備をしていても、一つのミスで全てが帳消しになるわけではありません。今まで救ってくれた、守ってくれた点を忘れてはいけないと思います。
日本のために身を削り、オリンピックにも出場してレベルアップを計り挑んだ彼をこの試合で責めることはできないと思います。チームの失点だったのですから。競馬も同じです。G1馬がなかなか勝てないと批判が集まり、再度勝つと復活した!と書かれることが多いです。しかし、それは競い合っているからこそ勝ちもあれば負けもあるということを前提にしていないことが多い気がします。騎手が悪い時もあれば厩舎が上手くできなかったこともありますからね。勝負事の世界には常についてまわることかもしれませんが、批判と違う形で応援を続けてほしいなと思いました。
先週は外国馬も4頭出馬したジャパンカップが行われ、世界一の騎手ムーアとヴェラアズールのコンビが勝利をもぎ取りました。上手く言い表せないのが悔しいですが、一言「ムーアすごい!」と単純に競馬ファンのように呟くほどの手腕だったと思います。馬を御し、ロスなく狭いスペースを縫うように且つ大胆に追って伸ばす技術は、これぞ世界一というレースでした。
2着にはシャフリヤールが入りました。こちらはコース取りの差が最後に出てしまったというところですが、クリスチャンもまた世界レベルの騎乗だったと思います。最後に内にモタれてしまったために騎乗停止となってしまいましたが、それでも彼だからこそのレースだったと思わされる内容でした。3着のヴェルトライゼンデとレーンしかり、世界レベルを日本馬で見せつけられたという結果になりました。日本馬はすでに世界レベルへと到達しているということを日本でも証明できたと思います。
ただ、今後世界で戦うためには、馬だけがレベルアップするだけではいけません。日本人騎手、JRAや採決、さらにファンのレベルアップも必要になってくると思います。小さな島国から世界レベルへ、今こそ根本から考えをアップデートする必要があると思います。競馬の厳しさや扱い、海外への武者修行と小さな国だけで終わらせてはいけません。変わることへの恐怖より挑戦する楽しみを受け入れてほしいなと思います。それこそが世界へ日本競馬が本当に躍動する時だと信じています。今回は色々なことを勉強させられたジャパンカップになりました。
今週からは中山、阪神、中京での開催となります。日曜中京ではダート王を決める戦いチャンピオンズカップが行われます。今年もまた人気を集めるのはテーオーケインズになるでしょう。得意の左回りで大きなコース、前走をメイチで仕上げていなかったことも効いてきそうだなと思っています。2番人気には私が応援しているクラウンプライドが選ばれると思います。前走の走りやトモの運びからも本格化はまだ先にあると思っていますが、ここで通用する力は十分にあると思っています。一気に王者へ向けて祐一君にも頑張ってもらいたいと願っています。
その他にも力は本物バーデンヴァイラーや伏兵侮るなかれ内からスルスルと抜けてくるのが想像できるスマッシングハーツがいますし、ジュンライトボルトも友道厩舎だけに油断はできません。日本ダート界最高峰の戦いは、ただただ勝利した馬を讃えられる素晴らしいレースになることを期待しています!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。