騎手人生に金字塔を打ち立てるか。いよいよやって来た第86回・日本ダービー。今年の戸崎騎手は、過去4戦すべてで手綱を執ってきたダノンキングリーと挑む。下馬評では皐月賞馬サートゥルナーリアが頭一つ抜けた評価を受けているが、大一番での逆転は?「相棒」と臨む競馬の祭典で勝利のチャンスはあるのか?枠順が確定した直後、心境・可能性を語ってもらった。

1週前更新「昨年2着で思い新た “相棒”ダノンキングリーと戴冠狙う!」はコチラ⇒

ウィクトーリアは痛恨出遅れで4着も G1級の走り

-:いよいよ日本ダービー(G1)ですね!枠順も確定して、天気も晴れの見込み。直前の見通しを伺いたいと思います。ですが、まず、先週のレース回顧から伺いたいところ。ウィクトーリアと挑んだオークス(G1)は4着。客観的に観た印象では、あのゲートでは、外枠もよりこたえましたし、スタートがスムーズならば、と悔やまれるところでした。

週刊!戸崎圭太

圭太:よろしくお願いします。そうですね…。スタートを出ていてくれれば、位置どりも違いましたし、たとえあのスタートだったとしても、内枠ならもっとリカバリーがきいていたと思います。

-:出走メンバー中、上がり34秒台だった馬は3頭。勝ち馬は強かったものの、ゲート次第では、もう一つ上の着順があっても…という着差。馬の気配はどうでしたか?

圭太:スタンド前の発走でも、テンションが上がることはなかったですし、雰囲気は良かったですよ。ただ、ゲートでいつも同じような仕草といいますか、タイミングよく出てくれればなあと思っていたところ、やはり出遅れてしまいました。ゲートの出方も伸び上がるような格好だけに、余計にこたえますね。

-:フローラSが終わった直後の談話では、距離の不安もあったと思います。2400mはこなせましたね。

圭太:そうですね。問題なかったです。秋も楽しみな馬じゃないですかね。今回でより可能性を感じました。

週刊!戸崎圭太

週刊!戸崎圭太

-:ちなみに、18日土曜は散水の影響で、東京の芝は水分を含んでいるという声も耳にしましたが、日曜の馬場は乾いていましたか。

圭太:いや、やっぱり水分を含んでいる感じでしたよ。完全に乾ききってはいなかったですね。

-:その他のレース回顧では、マックスアンは1番人気ながら4着でした。

圭太:フットワークはいいですね。ただ、頭が高くて、直線の伸びに影響しているところがあります。それに、出もスムーズじゃなく、序盤の位置どりの差ができてしまいました。

-:ジェイケイエースは2着、キモンカラーは3着と惜敗が続きました。

圭太:ジェイケイエースは非常に大きな馬ですね。一方で、器用さに欠けるところがあります。ただ、コース条件は合いますね。キモンカラーはセンスがありそうでしたし、その通り、走ってきてくれました。ただ、他馬を気にするようなところもあるので、解消されてくると、もっと良くなりそうですよ。

-:フィリーズランで勝たれました。

週刊!戸崎圭太

圭太:センスもありますし、乗りやすいですね。スピードもあります。右に張るところはあるものの、しぶとかったです。

-:ダノンフォワード、テイクザヘルムと人気を集めるも、圏外の結果でした。

圭太:ダノンフォワードは作戦、イメージ通りの競馬でした。ハナは叩けたのですが…。テイクザヘルムは懸念していたところが出てしまいました。というのも、テンションが高くて、道中から一生懸命になって走ってしまっています。今後、条件を替えた方がいいのかもしれません。

-:メヌエットは最後に突っ込んできて差し切り勝ちでしたね。

週刊!戸崎圭太

圭太:いつもテンションが高いらしいんですよね。でも、パシュファイアーを着けた効果があったのかもしれません。直線でもよく狭いところを突いてくれました。

-:クリップスプリンガ、タマノカイザーも惜しい結果が続きました。

圭太:クリップスプリンガはこの条件は合っていますね。前走より状態は良かった程ですし、東京の内に勝てるといいのですが。タマノカイザーは追い切りに乗っていい感触は得ていました。条件も合っていますし、頑張ってくれています。

-:ベターハーフで勝利。先週は3勝でしたね。

週刊!戸崎圭太

圭太:前走もいいレースをしていましたし、スムーズに運べればと思っていました。ただ、このところコンスタントに勝たせていただいていますが、決して楽ではないですよ…。

-:残り13ですからね。なんとか東京開催中だと…。今週末の話題では、土曜の東京2R(3歳未勝利)ではホーリーラインに騎乗。前走2着と好走しました。

圭太:芝替わりがいい方に出てくれて、走ってきてくれました。勝利を狙える存在だと思います。

-:葉山特別のビーカーリー、最終レース(4歳上1000万下)のアームズレングスと前走が惜しい結果です。

圭太:ビーカーリーは前走で器用なところをみせて、あわや勝利という内容でした。今回もいいレースを期待しています。アームズレングスは実績からも、勝って不思議ではない馬だと思うんです。開催中止で延びた影響が悪い方に出ないといいのですが…。

-:欅ステークスのワンダーリーデルは以前も乗られて、乗り味を評価されていましたね。

圭太:いい馬ですね。条件も千四という距離がピッタリだと思います。

-:日曜は6R(3歳500万下)のグランソヴァール、薫風ステークスのフィスキオ、むらさき賞のアモーレミオなど、おなじみの馬が揃います。

週刊!戸崎圭太

東京ダ千六戦に限定すると、7戦連続馬券圏内のフィスキオ

週刊!戸崎圭太

東京芝千八で2連勝中のアモーレミオ

圭太:グランソヴァールが芝でもダートでもいい走りをしてくれるんです。乗り味のいい馬だけに、結果を残したいです。フィスキオは条件が合っていますからね。アモーレミオは課題がつきまとうのですが、東京コースでは安定して走ってくれるんですよね。

-:アモーレミオの現状の課題といいますと、どんなところでしょうか?

圭太:ゲートや道中でムキになったり…。本来はパワータイプに思えるんですよね。

-:それでも、前走は上がり33秒台の速い上がりを使えたんですよね。

圭太:そうなんですよね~。能力は秘めているのでしょうし、1戦ごと良くなっているようなので、引き続き楽しみです。

-:今回は間隔も空いていますが、この時季の馬だけに成長分に期待しています。

-:次週水曜のさきたま杯(Jpn2)ではサンライズノヴァが控えていますね。

週刊!戸崎圭太

圭太:率直に楽しみにしています。ハマるんじゃないか…という予感はあるんですよね。浦和が合うんじゃないか、という。これが川崎の1400だったら、船橋には1400はないけど、他のコースなら、そうは思わないんです。浦和なら、と思っています。

-:ジョッキーは浦和の重賞を数多く勝たれてきましたし、得意とされているイメージ。楽しみな意見です。

圭太:ええ。みんながどう思うかはわかりませんけど(笑)、ハマるかどうか。どのみち位置はとれない馬ですが、コースが合うかどうか、だけですね。

渾身の騎乗なるか ダノンキングリーと日本ダービーへ

-:そして、日本ダービー(G1)に挑むダノンキングリーですが、1週前にもお話は伺いました。枠順も木曜に決まりまして、4枠7番からのレースになりました。見立てはどうでしょうか?

圭太:ええ、決められたところでやるしかないですからね。出てしまったものはどうこう言いようがないですからね。

-:水曜はポリトラックコースで追い切りに騎乗されましたね。1週前は助手さんが騎乗されて、ハードな追い切りを消化されていましたが、感触はどうでしょうか。

週刊!戸崎圭太

週刊!戸崎圭太

週刊!戸崎圭太

圭太:ダービーを迎えるにあたって、申し分ない状態だと思いますね。

-:萩原清先生とはレースプランなど練られているのですか?

圭太:先生の場合はレースに関しての指示は任せてもらう形が多いのですが、馬の状態に関しては、競馬場やトレセンなどで密に耳にしていましたよ。

-:確かに競馬場でもその日、厩舎の馬に乗っていないにもかかわらず、お話されているところも目にしました。今年の展開はどう観ていますか。

圭太:行く馬はいますよね。特殊な流れになるようなことはないのでは、と思っています。

-:これまでダービーに対する思いは伺いましたし、他のメディアさんでも発しているコメントも目にしましたが、これは去年も伺ったかもしれません。日本ダービーで自分が乗った年、それ以外も含め、記憶に残っているレースを挙げるとどれでしょうか。

圭太:あぁ~2010年ですね。内田(博幸)さんが勝ったことを鮮明に覚えています。僕はトゥザグローリーに乗せてもらって、初めてダービーに騎乗させてもらったんですよね。

週刊!戸崎圭太

2010年のジョッキー紹介式にて

週刊!戸崎圭太

-:自身は大井競馬所属時代で初めての騎乗のチャンスでしたし、大井の先輩の内田さんが勝ったレースでしたね。直線では、トゥザグローリーも直線ではオッ!と思うところがありました。お母さんはG1で活躍した血統馬でもありましたし。

圭太:そうそう。内田さんが勝ったことは嬉しく思いましたね。でも、自分の乗り方は今とは比較にならないです…(苦笑)。何も考えず、乗っていたなあと。

-:このコーナーでは騎乗に対する心構えであったり、僕が聞けるレベルでの乗り方についても、これまで伺ってきましたが、JRAに移籍して、7年。当時とは、技術的にも、精神的にも違うと言い切って大丈夫ですか?

圭太:ハイ、違います。

-:そんな意味を含め、経験が結実するレースになってほしいところ。今年は5月を終えるのですが、勝ち星的にもコンスタントに上がってきました。ここまでを振り返ると、どうでしょう。

圭太:今までの騎手人生もそうですし、色々感じてきたものを整理して、それがまとまってきたのが最近ですね。今はスッキリした心境で競馬に挑めていますし、集中力も高まっています。

-:内容も濃いですね。

圭太:濃くなっていますね。今は競馬が楽しいですし、色々感じるところもあり、充実しています。

-:まだまだ現役生活は続くのでしょうが、ここまでの積み上げてきたものが、ダービーという大きなタイトルで箔がつく、弾みになると。

週刊!戸崎圭太

圭太:そうですね。勝てたら、また違った景色が見えそうですし、勝てなくても、来年以降の課題として残るでしょうからね。でも、勝てても、来年以降も勝ちたいと思うはずです。

-:しかし、今まで一つのレースを勝ちたい。このレースを勝ちたいと意識するレースはありましたか?これまで伺ってきて、記憶にないんですよね。

圭太:いや~ないでしょうね。いよいよダービーということで、やっぱり枠が出るまでも楽しみでしたし、出てからの精神面、自分の感覚も違うな、意識があるな、と俯瞰して見ても思うんです。それが競馬に悪影響しないように務めないといけないですが、このワクワクとドキドキ感…。そして、幸せを噛み締めながら、最善を尽くしたレースを出来るよう、準備をして臨みたいです。とにかく、今までとは違いますよ。

-:淡々としているようで、負けん気は強い方だと思いますが、それでも、「このレース!」というのは初めて聞いた感覚です。騎手人生初めて意識したレースといっても、過言ではないのでしょうか。好相性だった東京ダービーもそんな感じではなかったと思います。

圭太:それは言えますね。特別に感じたレースはそこまでなかったですから。

-:周囲からもダービーについてエールを送られることも多かったんじゃないですか?

圭太:たくさん言葉をいただきましたね。そんな声に応えられるように、一緒に喜んでもらえるような結果になればと思います。

-:今週分は以上となりますが、健闘を祈ります。

圭太:ありがとうございます。

(聞き手:競馬ラボ・小野田)

※次回は5月31日(金)に更新予定です!

週刊!戸崎圭太