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雨が降ろうともディープ産駒、サトノアーサーが重賞初制覇!【平林雅芳の目】
2018/6/12(火)
18年6/10(日)3回東京4日目11R 第35回エプソムカップ(G3)(芝1800m)
- サトノアーサー
- (牡4、栗東・池江寿厩舎)
- 父:ディープインパクト
- 母:キングスローズ
- 母父:Redoute’s Choice
台風5号が太平洋側をユックリと進んで雨は大丈夫かと思いきやだいぶ降りだして、ひとつ前の10Rで芝も重馬場の発表となった。 芝の状態も各馬の体調、仕上がりも読めないまま、前走のメイS勝利のダイワキャグニーが1番人気。そのダイワキャグニーは直線でまったく伸びる気配もない中団のまま。その2秒先では、グイグイと外を伸びて行く前走3着のサトノアーサー。これが重賞初勝利とは思えないタイミングと伸びの確かさであった。 2着にはハクサンルドルフがいい脚で伸びてきたが、前を捕らえるほどの勢いまではなかった。1番人気馬だけが動けず、後の上位人気馬での決着だった。
長期休養明けのスマートオーディンがどんな競馬をするだろうか、もっと早くから雨が降って馬場悪化となってくれていたら坂路の悪路で動いていただけに、もしかしてと思っていたが、そこはあくまでも欲なのであろう。
しかしスタートを決めて前に出ていく武豊騎手の積極策には正直驚いた。1000mが59.6は、このクラスでの流れだけにゆったりだろう。だから直線でもう一度二の脚を使うのではないかと、ますます欲が深まるばかり。だが馬場の内をだいぶ開けて外へ出して来た。こうなると、前へ行く馬には展開の利なんてもう無いに等しいもの。
ラスト400を過ぎて追い出しにかかった時には、手応えがなくなってしまう。ここらが長期休養明けが出た感じだ。
サトノアーサーが、先頭に立ちかけたベルキャニオンを抜いて先頭に立つ。それに続くのがグリュイエールだが、ゴールが近づくにつれ内へもたれていく。その後ろからハクサンルドルフが馬群を割って出てきて前を追ってくる。川田騎手の右ステッキに呼応してグイグイと伸びて行く。グリュイエールを抜き、サトノアーサーに迫る勢い。半馬身差まで詰め寄ったところがゴールであった。この馬場、この流れで34秒台の脚を使ったのはこの馬だけだった。
雨が降るだろうと思っていた関西が、雨粒はひとつも降りてこず。混戦のハンデ戦、マーメイドSは51キロの軽量のディープインパクト産駒、アンドリエッテが内目から抜け出して勝利。10番人気に9番人気と、大荒れの決着。そしてますます雨脚が強くなっていく東京競馬のエプソムC。ここも荒れに荒れるのだろうか。そんな気持ちで観ていた。
ゲートは、一番外のサトノアーサーが真っ先に飛びだすぐらいに早かった。一度、二度と内の馬の動向を観る戸崎騎手。ベルキャニオン、いやその内からブラックスピネルが行くのかと思う中、スマートオーディンが一番前へと出た。それに続くのがマイネルフロスト。サトノアーサーは5番手、その内にダイワキャグニーがいる。そして後ろにグリュイエール、マイネルミラノがその外にいた。 前半3Fを35.4と、平均ペースに落として先頭を切っていくスマートオーディン。その内にマイネルフロストが半馬身差で続く。ここらでグリュイエールの外にいたマイネルミラノが、内ラチ沿いへと進路を替えて行く。同じくラチ沿いを進むのはトーセンマタコイヤで、この2頭だけが内を進んで行く。
マイネルミラノはそのまま前へ前へと進み、4コーナーに入る時は3番手。グルっと各馬が見える時には、ラチにピッタリで一番先頭になっているかに見えた。馬場のいい方へと進路を選ぶスマートオーディンとマイネルフロスト。 ラスト400を過ぎて追い出しにかかったが脚が重い。もっと外へと進路を取ったサトノアーサーと、さらにその外へ出したグリュイエールの脚色がいい。マイネルフロストの内をサーブルオールがいい脚を使って前に出てきそうな勢いだ。だが外のサトノアーサーとグリュイエールの勢いには勝れない。 グリュイエールが、どんどんとサトノアーサーの方に寄っていく。馬の後ろに入った感じで、ゴール前はもっとも追えていない。その横をハクサンルドルフが一気に交わして行く。一番前まで届きそうな勢いではあったが……。
ダイワキャグニーは、直線半ばまで伸びそうでもあった。だが内めの馬場を選んだ馬は軒並み伸びていない。マイネルミラノもトーセンマタコイヤもしかり。道中で勝ち馬のすぐ後ろにいたダイワキャグニー、直線で外へ出すほどの手応えがなかったのかも知れない。 発表は重馬場だが、実際は不良に近かったのではなかろうか。最後の1Fが12.5。ひとつ前のレースが、スローで上がり勝負となって違うだろうが11.5と切れ味を出せるコンデイションだったが、僅か35分後だがかなり悪くなっていた馬場とも言えようか。
サトノアーサーはデビューから連勝、きさらぎ賞、毎日杯と常に1番人気に支持されるほど。ダービー10着、菊花賞11着を経て路線をマイル、中距離路線に替えてきて結果を出してきた。道悪はきさらぎ賞でアメリカズカップに負けたり、今回も勝ったがあまり得手でもない。良馬場ならもっと切れ味が出るはず。 池江厩舎も鳴尾記念のストロングタイタン、そしてこのサトノアーサーのエプソムC勝ちと、やっと軌道修正をして来たか。 上半期もそろそろ終わり、次週からはローカル函館も始まる。そんな印象でありました……。
平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。
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