NHKマイルCでは単勝1倍台のミッキーアイルにクビ差まで迫り、馬連で万馬券という波乱を演出したタガノブルグ。しかし、自身が1番人気に支持された3戦ではしっかりと勝ち切っており、言うなれば早熟、短距離色が強いヨハネスブルグ産駒というプロフィールが盲点になっていたのだろう。そんな異色の陣営が選んだローテは、関屋記念で古馬との初対戦。3歳マイル路線のレベルを占う意味でも、同馬の走りには目が離せない。

二度目の対戦でライバルに肉薄

-:関屋記念に向かうタガノブルグ(牡3、栗東・鮫島厩舎)ですが、橘Sから中1週で挑んだNHKマイルCでは驚きの末脚を発揮してくれました。

鮫島一歩調教師:ジョッキーが上手いこと乗ってくれましたね。コーナーを内々で回って、上手いこと外に出して、終いは切れました。あの競馬で1600でも大丈夫なんだな。東京の1600をああいう形で差してくるのだから、将来的には距離を延ばしてもいいのかな、と感じました。

-:あの時は17番人気でした。評価が低かったのは、ファンの見る目がなかったのではなく、この馬の戦績を見ると致し方ないのかと思います。アーリントンCの時に勝ち馬のミッキーアイルと戦って、着順は4着ですが0.8秒負けています。

鮫:あの時は完全にミッキーアイルの一人舞台で、他が競りかけていかなかったというのと、ジョッキーがジッとしていれば、もうちょっと前(の着順)があったのかなという感じはあります。

-:それがNHKマイルではタイム差なしのクビ差です。

鮫:際どいところまできましたよね。

-:脚質的なものを考えると、毎回毎回とはいきませんが、展開さえハマればタガノブルグも大きい舞台で勝てるのかと考えられます。

鮫:その前の1400を良い時計で勝っていますし、能力はそれなりにあると思います。



-:1分20秒を切っていますよね。

鮫:内々を回ってくるという、上手い立ち回りができるというのも能力ですし、それを考えると、面白い馬なのかと思います。

-:特に追い込み馬の中には、大外を回して、他の馬を怖がるデメリットを抱えながら、末脚の良さだけで上位を狙うケースも多いと思います。この馬の良さは内外関係ないところですか?

鮫:普段からうるさいのですが、気持ちがけっこう強いのです。

-:パドックなど、僕らファンが目にするところでは、チャカチャカしていて、短距離馬にありがちな気性なのかなと思ったのですが、厩舎で見せて頂くと、意外に落ち着いている面もありますよね。

鮫:厩舎では人に対しても従順だし、落ち着いています。ウチの同じ様なタイプにエールブリーズがいますが、あの馬は最初も掛かるし、オドオドしたりしますが、厩舎でも人にかかってくるんです。そういう面では、タガノブルグは大人しいし、良い子ですね。

-:オンとオフの使い分けができているのですね。

鮫:そうですね。



ヨハネスブルグ産駒のイメージを変えた馬

-:先生がこの馬を初めてご覧になったのはいつ頃だったのですか?

鮫:オーナーから預かったのは2頭目ですが、けっこう遅かったです。育成場に入ってきてから初めて見たのですが、頭が高くて難しそうな馬でした。入ってきてからも頭が高いし、とにかく苦労しました。今はそういうところが全然ないです。

-:それはハミ受けなどですか?

鮫:ハミを嫌うというのもありますし、ああいうタイプなので、馴致が難しかったのだと思います。こっちにきてから、じっくりとやっていったら、けっこう素直に思ったより早く矯正できました。

-:猛烈に追い込んでくる馬というのは、前半なだめるのに苦労したり、諸刃の剣みたいなところがあります。この馬は案外、騒ぎません。手応えが感じられないくらいで、逆に心配になります。それほど乗りやすそうなイメージがあります。

鮫:NHKマイルCでも馬込みの内々に入って、経済コースを通って折り合いがついていたし、直線もジョッキーが狙ったところから抜け出せました。そういう面では、乗りやすい追い込み馬なんですかね。


「体型だけでは一概に言えないのですが、この馬は体型や気性的にスプリンターですよね。だけど、レース運びを見ていると、もう少し距離に融通性がある気がします」


-:もともと末脚が確実な馬でしたが、あそこまで切れるなら、もうひとつ上の舞台で初タイトルを狙っていきたい馬だと思います。右回りも左回りもこなせますし、展開には左右されるかもしれませんが、確実な末脚を持っています。お父さんのヨハネスブルグは現役時代には2歳戦しか勝っておらず、3歳では勝てずに引退しているんですよね。

鮫:早熟性は子供にも出ています。他の馬たちも勝ち上がり率は高いし、短いところではポンポン勝ちましたからね。この馬も気性的には短距離馬かなという気はしました。

-:マイルを持つからには、短距離馬の中でもマイラーという表現でいいと思います。

鮫:東京のマイルをああいう形で走れるのだから、スタミナはあると思います。パドックなんかでチャカチャカする面が落ち着いてきたら、距離もこなしてくるかなという気はします。

-:その辺はお父さんのブリーダーズカップ・ジュヴェナイルも勝っている血に、母系にはスペシャルウィークが入っています。スペシャルウィークは伸びすぎて、コルク針みたいに縮めておくことが難しく、弾けさせるのに苦労するイメージがあったのですが、この馬はどちらかといえばヨハネスブルグが出ているのですか?

鮫:出ている感じですね。スペシャルウィークというよりもヨハネスブルグですよね。体型的にも短距離馬の特徴を持っています。

-:バリバリの1200や、スプリンターズSに出て行くような体型でもないですね。

鮫:体型だけでは一概に言えないのですが、この馬は体型や気性的にスプリンターですよね。だけど、レース運びを見ていると、もう少し距離に融通性がある気がします。

-:一回、2000mとかも使ってみてもいいかなという感じですか?

鮫:東京だったら1800にしますかね。これから1600で慣れていったら、案外、面白いかもしれません。



-:コーナー4つがこなせたら、選択肢も広がりますよね。

鮫:器用さがあるので、コーナーは案外いいかもしれません。

-:ヨハネスブルグ自体も、4歳で種牡馬的な価値を落としたくないから、現役を引退しただけの話で、2歳時の成績だけで早熟と決めるのは危険かもしれません。その後は未知数ですから。そういう意味では、タガノブルグの活躍は、セレクトセールに向けてもタガノブルグの価値やイメージを変えた気がします。

鮫:僕自身のイメージも変わりました。ヨハネスブルグで長いところを走っている馬はいませんが、自分のところの馬で1800、2000と試したいですよね。

-:夢を与える意味でも使ってみてください。

鮫:これから使っていって、もっと落ち着きや融通が出てくれば、近い将来に試してみるかもしれません。

タガノブルグ・鮫島一歩調教師インタビュー(後半)
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